2013年10月アーカイブ

誇りなき鹿

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 IMG_1022.jpg奈良の春日山を歩いてきました。

 休日の出勤が続いたので、晴れそなウィークデー振替え休日にして出かけたのです。

 今回は奈良町の散策は割愛して市内循環バスで高畑町に降り立ち、奈良公園の南端を東へてくてく。志賀直哉旧居を過ぎるあたりから森が迫ってきます。左折して春日山遊歩道に入るつもりが、なんと先日の台風の影響で歩道が通行止めに。柳生街道に迂回せよと看板が立ってます。

 しかたないのでまっすぐ進むとそのまま柳生街道(滝坂の道)につながります。この道は今年1月、反対側の円成寺方面から出発して市内まで歩いたので、今日は逆に辿っていくことになります。途中で左に折れて春日山の散策歩道に進むこととしました。天然記念物の原生林を一巡りして若草山の山頂に出る、お手軽ハイキングです。石畳の道は濡れていると案外と歩きにくいものです。うっかりすべって足を挫いたりしないように慎重に進みます。

 

 

 

 

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 「首切り地蔵」の休憩所というポイントで滝坂の道から分かれて、春日山原始林に入ります。このお地蔵様、大っきくてほぼ人の背丈ほどもあります。ちょうど首のあたりに割れ目があって、昔、荒木又右衛門という剣豪が試し斬りしたということになってます。「伊賀上野鍵屋の辻の決闘」で36人切り殺したというむちゃくちゃなお話の人です。伊賀の国出身で大和郡山藩に召し抱えられてたそうやから、柳生街道にゆかりの逸話があっても、まあ辻褄は合います。しかし、言うのは勝手ですが、何ともいいかげんな話を作ったもんです。石の地蔵を切ったりしたら刃こぼれしちゃうやないですか。写真は1月に撮ったものです。

 

 

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 しばらく進むと「奈良奥山ドライブウェィ」という有料道路に合流します。もちろん歩くぶんにはタダですが、クルマで全区間走ると普通車で1,820円もとられるとか。一方通行でほぼ全線がダートでさぞ走りづらいやろうに、ずいぶんなお値段です。きっと天然記念物の原始林保護のために、ホントはクルマなんかで入ってきてほしくないということなんでしょう。そんなら道路なんか造らんときゃええのに。よく分かりません。

 コース沿道の「鶯の滝」など観ながらてくてく。ずいぶんと視界が明るくなってきたなと思ったら、そろそろ若草山頂上の駐車場にとうちゃく。少し登ると山頂です。若草山は中学校のときに遠足で来て以来かな。

 このあたりまで来ると、こちらも天然記念物「奈良公園のシカ」がウロウロしています。ベンチに腰掛けて、いちまつの不安を抱きつつ弁当をひろげると、案の定、一頭のシカが音もなく近寄ってきました。

 「分けてくれ。」
 「ダメ。お腹すいてるんで、勘弁してください。」

 真正面から堂々とわたしの大事な柿の葉寿司を食べようとします。何という厚かましさ。

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 「おまえ、天然記念物の誇りはないのか!」 

 シカ 「知らんがな。くれ。」

 真近に大きなシカの顔。正面から見るとお前、顔の真横に目がついてるのな。そんなのでなんで前が見えるわけよ、とか感心しながら私は、短い足を伸ばして迫り来る略奪者の胸元に押し当ててその突進を必死に食い止めながら、なんとか昼食を食べ続けました。最後に根負けしてお寿司一個の半分だけ分けてあげましたよ。まったくもう。

 若草山山頂から見晴るかす奈良市街。なかなかいい眺めです。右下に見える白いハコには係のお兄さんがひとり座ってて、わたしみたいに裏の春日山から入ってくるハイカーからひとり150円の入山料を徴収しています。このお兄さんの人件費にも到底足りないような気がします。変なの。
 

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 さて若草山下りて東大寺に向かいました。

 実はこの前東大寺に来たとき、法華堂(三月堂)が修理中で拝観できなかった。また2年前にオープンした東大寺ミュージアムもまだ入ってことがないので、奈良検定受検の勉強もかねて是非もいちど観ておこうと思っていたのです。

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 平日ということで、山の中では行き交う人もまばらで原生林の自然をゆっくりと堪能できたのですが、東大寺の境内に一歩入るとなんとそこは壮絶な人の波でした。そのほとんどが修学旅行の生徒・児童たちです。休日は外国人や一般観光客で賑わう境内が、今日は旗を持ったガイドさんを先頭にずらずらっと列を成して闊歩する小中学生たちの大集団で埋め尽くされています。なるほど、奈良公園の平日はこういうことになっているのか。

 今日最大のお目当てである法華堂でも、中学生とおぼしき一団がガイドさんの説明を神妙に聞いてました。そばで立ってると専門家の貴重な解説をタダで聞くことができて、実際にお得です。10体もの仏像が文字通り一堂に会して立ってます。ちょっと前までここには有名な「日光・月光菩薩」はじめ、さらに6体もの仏像が安置されてましたがミュージアムができたのでそっちに移されたそうです。勝手に移しちゃっていいもんなんでしょか。昔からこのお堂にあってこそ何らかの宗教的な意味があるんやないかと思うのですけど。まあええか。

 しかし、ここの仏様たち、でかっ!!本尊の不空羂索観音は5メートル近い威風堂々たる姿。天平時代を代表する仏像彫刻の傑作です。ほかの脇侍たちもまぁ大きいこと。今はひる日中、大勢でわいわい拝観しているからいいけど、もし何かの都合で深夜にひとりこの場にいるような事態になったら、おそらく相当にビビってしまうこと間違いありません。もんのすごい迫力です。

 このあとミュージアムに移動し入館料500円也を支払ってじ~っくり見学しました。

 やはり日光・月光菩薩ですね~。ほんっとーに久し振りの対面ですが、やはりその存在感に圧倒されます。仏法の修行の身でありながら観る人の深奥を見透かすかのような鋭いその表情を見つめていると、しっかり自らを省みよ、と無言で語りかけているような厳しさを感じます。数ある東大寺の仏様の中でも、大仏様よりも、法華堂の御本尊よりも、愁眉の傑作やとあらためて思いました。

 う~ん。奈良はやっぱり良い!

捨てる人拾う人

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 毎年参加してる、地域と大学主催の淀川クリーンキャンペーン、今年も行ってきました。

 またしても台風接近であいにくの曇天でしたが、時折小雨がパラパラするぐらいで、何とか最後までもってくれました。

 およそ1時間のウォーキングかねてのゴミ拾い。参加者それぞれゴミばさみとビニール袋持って、一斉にスタート。

 ところが河川敷、パッと見、とてもキレイなのです。

 じつは、先日の台風18号が直撃した際、この広い河川敷は濁流に沈み、水が引いたあとには大量の瓦礫とゴミが堆積しました。これは市民や学生参加のイベントなんかでは到底歯が立つ状態ではありません。河川を管理している行政のどっかの部局がそれなりに手を打ったのでしょう。普段どおりの河川敷の姿に戻っています。しかし、それでも撤去しきれなかったガレキの山がいくつか残っています。こんなのは、今日のゴミ拾いでは対象外です。

IMG_1068.jpg ということは、やはり去年よりもゴミは少ない。数百人のゴミ拾い隊がせーので繰り出すもんやから、早いもの勝ちで少ないゴミの取り合いといった様相を呈してます。あちこちで「やったー、大物ゲーット!」なんてやってる(^^)

 大雨で流れ着くのを別とすると、河川敷には普段から目立ったゴミはありません。わんどに面した広い河川敷には道路もあって人の行き来がわりと多い。だからゴミが少ない。街かどでも人通りが多いところは、比較的道端のゴミが少なくて、一本入った路地裏には空き缶なんかのポイ捨てが目立ちますよね。

 この現象はつまり、人目があるときには捨てにくいというよりも、われわれは人様に見苦しいすがたを見せることを特に恥と感じていることが根にあると思うのです。見えるところはことさらにキレイに保つ。われわれサラリーマンでもそれぞれ職場での身の回りは整理整頓してピカピカにするけど、自宅は「お部屋」ならぬ「汚部屋」の状態という人もよくいるそうです。

 外国からの観光客は、日本の街のゴミの少なさに驚愕するそうですが、日本人の矜恃の為せるワザと言っていいでしょう。海外を旅行すると特に感じます。近年わが国では公園や行楽地でもゴミ箱がない場合が多い。「ゴミ箱を無くす」という発想は日本ならではではないでしょうか。よく考えるとスゴイことです。「ゴミ箱がないのなら、持って帰るしかない」と考えるか、「ゴミ箱がないということは、どこにすてても良いということ」と考えるか。民度の習熟があってこそできるのやと思います。

 そんな風に公共のエリアのゴミを減らしてきた日本ですが、まちかどでちょっと注意して見ると、マレに落ちてるゴミはその大部分がタバコの吸い殻なんですね。この日のゴミ拾いの収穫でも体積では空き缶やペットボトルが多くを占めますが、拾った件数ではやっぱり吸い殻が圧倒的に多かった。

 歩きタバコしてる人は、必然的に道路を灰皿がわりにするほかありません。ちょっと観察してるとあからさまに捨てるのはそれでも少し気がひけると見えて、道路の側溝や排水溝に投げ入れる人が多い。ポイ捨てした吸い殻という自らの恥の痕跡を消してしまえるからです。

 恥の感じかた、ちょっと違うような気がしますよ。

ノーベル賞!?

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一向に涼しくなりません。

 例年、わたしの街では10月初めのある朝、窓を開け放つと何処方からともなく風に乗って金木犀の香りが届きます。その同じ日、駅に向かう途中にある大きな金木犀の樹も強い芳香を放ち始めます。そして大阪市内、職場隣りの大きな公園内の舗道でも同じ香りに気がついて「おお、この国がいちばん美しい燃える秋が訪れてきたことよ」 と感慨に耽るのです。

 しかるに今年はもう10月も半ばになろうかというのに、金木犀、一向に咲きません。香りません。猛暑、竜巻、豪雨という今夏の異常気象が四季の巡りにも悪さしてるのか、なんだか異状を呈しています。昨日は職場オフィスにエアコンがはいりました。施設管理担当者のめずらしく柔軟な対応はありがたかったわけですが、何せそろそろ涼しくなってもらわないと身体にもこたえますわい。

 さて今日は、村上春樹のことを書いてみます。

 ノーベル文学賞、今年も残念な結果となりましたね。産経新聞電子版の誤報には大笑いしましたけど。ホントに騙されましたもん。

 昨年の今頃、ノーベル賞ウィークには山中伸弥博士の生理学・医学賞の受賞に日本中湧いた一方で、同時に村上春樹氏が文学賞の最右翼と期待されましたが、結果受賞したのは中国のなんとかいう人でした。

 中国は3年前に服役中の劉暁波という民主活動家にノーベル平和賞が授与されて「犯罪者に平和賞を与えるとは犯罪を奨励するのか!主権侵害でもある。ケシカラン!」 とかキレてしまい、劉さんを監獄から釈放するどころか、受賞のニュース配信は遮断するわ、ノルウェーとノーベル委員会に食ってかかるわ、あげく「平和賞の授賞式なんか参列するんやないど」 と多くの国を脅迫するわといった狼藉を働き、世界中から非難・嘲笑を浴びました。そんな前科があったもんやから昨年の文学賞はどうすんのかいなと思ってたら、こっちはありがたくいただきます、中国文学万歳!ということでした。相変わらずの厚顔無恥、何ともわけの分からない国です。世界最大の人口を有する国が民主主義国家ではなく一党独裁の人権無視社会やということは、人類にとって最大の不幸であり、核兵器なんかよりもはるかに危険な害毒である、といつも思うのです。

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 村上春樹、ファーストコンタクトが「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」でした。就職して間もない頃やったと思います。当時、村上 龍と「ダブルムラカミ」なんて呼ばれてて「愛と幻想のファシズム 」と相前後して読み、何だか名前も似てるけど雰囲気も似てるなぁと思った記憶があります。その後「スプートニクの恋人」「ノルウェイの森」と読んでいくにつれて、あ、やっぱし違うわと感じ、「海辺のカフカ」で、これは凄いということになりました。およそ起こりえない事象を日常のなかで容易く実現し、それを違和感なく表現していく。すさまじい創造力です。天才を感じます。「1Q84」で世界中の期待に応えた頃からノーベル賞の呼び声が高くなって今に至ります。

 好きな作家のひとりではありますが 「村上春樹の何をどう理解して『好き』などと言うのだ」 なんて問われそうでなんだか怖い気がします。

 なんだかよく分からんけど、その「分からん感」がなんとも文学的で好き、とでもいうしかありません。何せノーベル賞候補といえば今時点で人類最高の文学者です。その作品を凡人が簡単に理解して語ろうなんて、そんな自惚れてはいませんって。

幸せの微笑み

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 台風が次々に日本を窺ってるそうですが、今日は朝からお天Renoir Samary.jpg気がよろしい。

 今週はちょっと忙しくなりそうなので、いささか精神の充電を画策して、お出かけしました。

 神戸市立博物館で開催中の「プーシキン美術館展」。思い出すに、いちばん最近出かけた企画美術展が確か「マウリッツハイス美術館展」、このときも同じ神戸市立博物館でした。この種の美術展は東京、横浜から大阪飛ばして神戸に来ると決まってるのでしょうか。まあいいけど。

 お目あてはやはりルノワールですが、その他にもシャガールありゴッホありセザンヌありゴーギャンありと、ほんまかいなと思うほど人気の巨匠テンコ盛りで、お得感のあるイベントでした。

 「マウリッツ…」のときは、目玉となる出展が例のフェルメール≪真珠の耳飾りの少女≫やったわけで、壮絶な混雑。建物の外まで長い行列ができてて、館内でも行列用にひと部屋使うようなありさまでした。そこで今日も覚悟して行ったのですが、休日にもかかわらずさほど混んでませんでした。時間が早かったからかな。おかげでゆっくりと堪能できました。Renoir Irene00.jpg

 

 ルノワールといえばその肖像画代表作にして空前の傑作「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢の肖像」がありますが、こちらも何年か前に大阪でルノワール展があったときに会いに行きました。今日はそのとき以来のホンマモンのルノワールです。

 イベントの看板になってる≪ジャンヌ・サマリー≫「人を幸せにするスマイル」のキャッチフレーズどおり、かすかに微笑んだ屈託のない自然な表情と背景の薔薇色。わけもなく幸せを予感させる天使を彷彿させる作品です。ルノワールの真骨頂、ジャンヌの微笑みに比べたら、申し訳ないけどモナ・リザの微笑などは不気味で邪悪に見えてしまいます。

 本物は圧倒的な迫力があります。美術品に限らず、音楽にしろスポーツにしろ、超のつく一級品はそれぞれの領域で人類の最高到達致点を見せてくれるわけです。それらにふれて素直に「スゲ~ッ!」と感動して魅せられることはすなわち、人間の可能性の極致を知ることで自分にとっても人としての在り方の示唆を得ているのやと思います。自分が成長するためには視野を拡げ文化レベルの幅を拡げ、夢と目標を掲げることが必要です。そしてそのためには一流にふれることはすごく効果があると思うのです。

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 ゴーギャンの作品《エイアハ・オヒパ(働くなかれ)》 衝撃のタイトルです。タヒチではあくせく働かずに、静かに空想にふける休息は神聖な意味を持っていた、という説明が絵の横に掲げてありました。

 一緒にいたうちの奥さんに「俺もこれがいい。静かに瞑想にふけるのだ」 と言ったら、「バカ言ってないで、しっかり働け」と叩かれました。

 現実は厳しい。

WELCOME

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PROFILE

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katsuhiko

男 

血はO型

奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

生まれてから約半世紀たちました。

お休みの日は、野山を歩くことがあります。

雨の日と夜中はクラシック音楽聴いてます。

カラオケはアニソンから軍歌まで1000曲以上歌えます

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