誇りなき鹿

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 IMG_1022.jpg奈良の春日山を歩いてきました。

 休日の出勤が続いたので、晴れそなウィークデー振替え休日にして出かけたのです。

 今回は奈良町の散策は割愛して市内循環バスで高畑町に降り立ち、奈良公園の南端を東へてくてく。志賀直哉旧居を過ぎるあたりから森が迫ってきます。左折して春日山遊歩道に入るつもりが、なんと先日の台風の影響で歩道が通行止めに。柳生街道に迂回せよと看板が立ってます。

 しかたないのでまっすぐ進むとそのまま柳生街道(滝坂の道)につながります。この道は今年1月、反対側の円成寺方面から出発して市内まで歩いたので、今日は逆に辿っていくことになります。途中で左に折れて春日山の散策歩道に進むこととしました。天然記念物の原生林を一巡りして若草山の山頂に出る、お手軽ハイキングです。石畳の道は濡れていると案外と歩きにくいものです。うっかりすべって足を挫いたりしないように慎重に進みます。

 

 

 

 

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 「首切り地蔵」の休憩所というポイントで滝坂の道から分かれて、春日山原始林に入ります。このお地蔵様、大っきくてほぼ人の背丈ほどもあります。ちょうど首のあたりに割れ目があって、昔、荒木又右衛門という剣豪が試し斬りしたということになってます。「伊賀上野鍵屋の辻の決闘」で36人切り殺したというむちゃくちゃなお話の人です。伊賀の国出身で大和郡山藩に召し抱えられてたそうやから、柳生街道にゆかりの逸話があっても、まあ辻褄は合います。しかし、言うのは勝手ですが、何ともいいかげんな話を作ったもんです。石の地蔵を切ったりしたら刃こぼれしちゃうやないですか。写真は1月に撮ったものです。

 

 

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 しばらく進むと「奈良奥山ドライブウェィ」という有料道路に合流します。もちろん歩くぶんにはタダですが、クルマで全区間走ると普通車で1,820円もとられるとか。一方通行でほぼ全線がダートでさぞ走りづらいやろうに、ずいぶんなお値段です。きっと天然記念物の原始林保護のために、ホントはクルマなんかで入ってきてほしくないということなんでしょう。そんなら道路なんか造らんときゃええのに。よく分かりません。

 コース沿道の「鶯の滝」など観ながらてくてく。ずいぶんと視界が明るくなってきたなと思ったら、そろそろ若草山頂上の駐車場にとうちゃく。少し登ると山頂です。若草山は中学校のときに遠足で来て以来かな。

 このあたりまで来ると、こちらも天然記念物「奈良公園のシカ」がウロウロしています。ベンチに腰掛けて、いちまつの不安を抱きつつ弁当をひろげると、案の定、一頭のシカが音もなく近寄ってきました。

 「分けてくれ。」
 「ダメ。お腹すいてるんで、勘弁してください。」

 真正面から堂々とわたしの大事な柿の葉寿司を食べようとします。何という厚かましさ。

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 「おまえ、天然記念物の誇りはないのか!」 

 シカ 「知らんがな。くれ。」

 真近に大きなシカの顔。正面から見るとお前、顔の真横に目がついてるのな。そんなのでなんで前が見えるわけよ、とか感心しながら私は、短い足を伸ばして迫り来る略奪者の胸元に押し当ててその突進を必死に食い止めながら、なんとか昼食を食べ続けました。最後に根負けしてお寿司一個の半分だけ分けてあげましたよ。まったくもう。

 若草山山頂から見晴るかす奈良市街。なかなかいい眺めです。右下に見える白いハコには係のお兄さんがひとり座ってて、わたしみたいに裏の春日山から入ってくるハイカーからひとり150円の入山料を徴収しています。このお兄さんの人件費にも到底足りないような気がします。変なの。
 

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 さて若草山下りて東大寺に向かいました。

 実はこの前東大寺に来たとき、法華堂(三月堂)が修理中で拝観できなかった。また2年前にオープンした東大寺ミュージアムもまだ入ってことがないので、奈良検定受検の勉強もかねて是非もいちど観ておこうと思っていたのです。

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 平日ということで、山の中では行き交う人もまばらで原生林の自然をゆっくりと堪能できたのですが、東大寺の境内に一歩入るとなんとそこは壮絶な人の波でした。そのほとんどが修学旅行の生徒・児童たちです。休日は外国人や一般観光客で賑わう境内が、今日は旗を持ったガイドさんを先頭にずらずらっと列を成して闊歩する小中学生たちの大集団で埋め尽くされています。なるほど、奈良公園の平日はこういうことになっているのか。

 今日最大のお目当てである法華堂でも、中学生とおぼしき一団がガイドさんの説明を神妙に聞いてました。そばで立ってると専門家の貴重な解説をタダで聞くことができて、実際にお得です。10体もの仏像が文字通り一堂に会して立ってます。ちょっと前までここには有名な「日光・月光菩薩」はじめ、さらに6体もの仏像が安置されてましたがミュージアムができたのでそっちに移されたそうです。勝手に移しちゃっていいもんなんでしょか。昔からこのお堂にあってこそ何らかの宗教的な意味があるんやないかと思うのですけど。まあええか。

 しかし、ここの仏様たち、でかっ!!本尊の不空羂索観音は5メートル近い威風堂々たる姿。天平時代を代表する仏像彫刻の傑作です。ほかの脇侍たちもまぁ大きいこと。今はひる日中、大勢でわいわい拝観しているからいいけど、もし何かの都合で深夜にひとりこの場にいるような事態になったら、おそらく相当にビビってしまうこと間違いありません。もんのすごい迫力です。

 このあとミュージアムに移動し入館料500円也を支払ってじ~っくり見学しました。

 やはり日光・月光菩薩ですね~。ほんっとーに久し振りの対面ですが、やはりその存在感に圧倒されます。仏法の修行の身でありながら観る人の深奥を見透かすかのような鋭いその表情を見つめていると、しっかり自らを省みよ、と無言で語りかけているような厳しさを感じます。数ある東大寺の仏様の中でも、大仏様よりも、法華堂の御本尊よりも、愁眉の傑作やとあらためて思いました。

 う~ん。奈良はやっぱり良い!

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katsuhiko

男 

血はO型

奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

生まれてから約半世紀たちました。

お休みの日は、野山を歩くことがあります。

雨の日と夜中はクラシック音楽聴いてます。

カラオケはアニソンから軍歌まで1000曲以上歌えます

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