片隅で聴いていた

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 新しい日銀総裁に就任した植田和男さんの会見が先週ありました。バズーカ黒田さんの金融緩和路線を継承し、当面、物価上昇2%など足元の目標達成にとりくむようです。難しい理屈は分かりませんが、初めての学者出身の総裁ということで、政治屋たちの利害に影響されない理論的かつ効果的な金融政策をお願いします。 veloci.jpg
 ところで、この植田さんを初めて見たときジュラシックパークの悪役恐竜ヴェロキラプトルに似てると思ったのは、わたしだけでしょね多分。

 さて、先週ボブ・ディランのライブに行ってきたので、今日はそのこと書きます。ノーベル賞受賞後初めての世界ツアーで、来日公演は7年ぶりやそうです。数年前に来日決まってたのにコロナ禍で中止んなったりしました。わたしにとっては初めての生ディランでした。

 神々しいライブでした。開演が少し遅れ、待ちきれない聴衆から催促のような拍手が起こる中、おもむろに登場した81歳の伝説的プロテスト・シンガーの迫力に場内はいきなりの興奮に包まれます。薄暗いステージの中央で終始ピアノに向かって動くことなく語ることもなく、ただ淡々と歌いあげていく進行は、ヘタな演出など一切なくて聴衆に媚びずに詞と曲の真髄をストレートに伝えるものでした。

20230406_074338857_iOS.jpg 2時間弱のステージで途中1回だけ立ち上がって客席の方に向かって歩きだした場面があったのですが、足元はおぼつかないように見えました。「時代の代弁者」「ロックの詩人」も、寄る年波には抗えないのです。しかし、歌は声量、質ともにまったく衰えていません。これなら80歳過ぎてなおワールド・ツアーやろかと思えるはずだわ。

 今から40年前、ガロが「学生街の喫茶店」の「片隅で聴いていた」のがボブ・ディランやったわけで、当時小学5年生のわたしは「何それ、おいしいの?」と思ったもんです。同世代では同じような人が多いのではないでしょか。しかし、もう少し上の世代にしてみれば当時30歳のディランはすでにしてプロテスト・ソングのカリスマとしてミュージックシーンに確固たる地位を築いていたのです。

 今回の機会に、ディランの沢山の曲をyoutubeで聴いてみました。じっくりと聞くとやはり心に迫るものがあります。ノーベル賞受賞というサプライズもおまけみたいなもんで、ディランはその生涯を通して(まだ生きてはるけど)時代とともにひとびとに感動を与え共感を得てきたんやなと改めて思います。

 ちなみに、ディランの受賞理由は「新たな詩的表現を創造した」ということやそうです。悦楽的な娯楽とみなされていたロックミュージックを、詩歌や小説と同じ芸術の域に昇華させた功績にノーベル賞の委員会は着目したと。まったく知らなんだけど、何年もの間候補にはなってたそうです。しかし、おそらくはディラン本人は「ロックが文学と同レベルに評価されるべく頑張ってきました」なんて、そんなつもり毛頭なかったんでしょうよ。自分の心のままにあふれる思いを言葉で表現し、感情のおもむくままにメロディーにのせて声に出したら素晴らしい楽曲となった。それを繰り返してるうちいつの間にか音楽界のレジェンドと称えられるようになったと。まあ、天才ですわな。Dylan.jpg

 今回のセットリスト、わたしが知ってる曲はありませんでした。もし何曲目かに「~How many roads must a man walk down...」なんて語るように歌いだしたら、それこそどっかーん!とさらに大受けしたんでしょうが、ディラン御大はそんなことはまったく考えません。それで良いのです。遠い日に山上路夫の詞で初めて知ったレジェンドのオーラに、40年の時を経て触れることができたのです。「間に合った」と思いました。

 最後の曲が終わったとき、脇に置いてた白い帽子をかぶると再びステージの前方へとよろよろと出てきたディラン、メンバーと横一列に並んで客席をじいっと睨んだのち一言も発せず去っていきました。アンコールを求める拍手の空しさよ。それで良いのです。

 みうらじゅんさんは「ディランのアルバムをどれか一枚聴こうと思うなら、ディランが今の自分と同い年の時に作ったアルバムを聴け」と言ってます。わたしの場合数えてみると2001年、同時多発テロの年です。探して聞いてみよ。しばらくマイブームが続きます。

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katsuhiko

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奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

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