復刻名著の趣き

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 未明に大雨が通り過ぎたようでスマホに豪雨警報が届いてますが、目覚めた頃にはすっかり上がり今では爽やかな秋の朝です。昨日、インフルの予防接種打ってからその他もろもろのご用事も済ませてますので、今日は完全休養日とし部屋を掃除したあとはおうちでまったりと読書で過ごします。

 今日の話、不思議なシリーズ刊行物のことです。

 日本近代文学館という、日本の文学に関する資料の収集保存を手掛ける財団法人がありまして、事業の一環として長きにわたってやってきたのが初版本の復刻販売なのです。20221023_001942164_iOS.jpg

 近代文学の名著として今に伝わる作品が、明治から昭和にかけて最初に出版された際の体裁をそのまま複製したものです。本当に初版出版の際のまんまで、繁体の漢字や旧仮名遣いはもちろん、印字のかすれにじみ、箱や装丁に至るまで忠実に再現しています。当時の本にはアンカットつまり小口のところをペーパーナイフで切りながら読み進めるものもありますが、もちろん復刻版ではそのとおりに綴じられてます。

 昭和の頃から今に至るまで地味に人気があり、繰り返しシリーズ化され、なんと185人の作家による480ものタイトルを復刻したというからすごい。最初のシリーズは1968年から69年にかけて126点の初版本を復刻して販売したもので、一括のお値段180,000円やったそうです。今の価値にして約80万円相当やとか。それが、限定3,000セット瞬時に売り切れたそうです。発売を手掛けたのは「ほるぷ出版」という出版社で、文学館と結託してその後もこのシリーズを繰り返し発売したといいますからさぞ大儲けしたやろと思ったところ、なんとその後経営不振で倒産しました。なんでも社員の多くが共産党員で、事業展開が下手くそやったからなんて言われてます。商売っ気がなかったんですな。

20221023_002059263_iOS.jpg それほどの人気シリーズであれば、現在の中古市場でもさぞかしお値段が張るかと思いきや、全巻セットでも1万円以下、バラやと古書店で数百円で手に入ります。不思議な話ですが、古本市などではどのお店のテントでも1冊は見つけることができます。

 私もこれまでに、古本屋さんで何冊かを買いました。令和の現代に至るも高く評価される名著なんやから読んだことがある作品が多く、改めて読むにしても現代版の文庫本の方がはるかに読みやすい。なぜに古い活字で旧仮名遣いの、読み進めるのにいささか苦労する初版本の復刻を買うのか。やはりそれは、今に至る名著が誕生したその時点の空気、雰囲気を感じること、そして、日本の宝である名著が世に出た姿を、その後の現代に至るまでの評価を抜きにして味わってみたいという、素直な知的好奇心によるものです。そういう意味では、復刻ではなくホンマもんの初版本は稀に市場に出ても1冊数十万円から、ものによっては数百万円の値が付き一般ピーポにはまず入手不可能であることを考えると、復刻版の価値も大きいのです。

 初めてこのシリーズのことを知ったのは学生時代。麻雀仲間の友人ちに行ったところ、セットが書架に並んでいたのです。お値段を聞きませんでしたが、その時代でもおそらくは数万円はしたでしょう。彼は「初版の実物ならわかるけど、復刻版なんて買っても仕方ないよね」と自嘲気味に言ってて、実は私もその時そう思ったもんでした。しかし今にして思えば、その頃の私がレコード(まだCD以前の時代)やマンガ本に費やしていたなけなしのお小遣い、彼は日本文学の粋を極め、自身の教養を高めることに投資していたのです。慧眼と言えます。

 これから、古本市で見つけたら少しずつ集めといて、リタイヤして時間ができたら、ゆっくりと読んでみよかななんて思ってます。

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katsuhiko

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