お笑い新幹線

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 ウクライナ情勢気になるところですが、今日は関係の無いお話を。

 先週ネットのニュース見てたら、北海道の留萌本線が廃線になりかけている旨の記事がありました。深川から留萌を経て増毛に至るこの路線は、留萌-増毛間が2016年すでに部分廃線となってます。増毛駅は高倉健さんの映画「駅 STATION」の舞台として有名になったところです。それが今や残る深川-留萌間も廃線に向けて風前の灯で、これまでの多くの廃線路線とは違って地元の留萌市も廃線に反対していないんやとか。

haisen.jpg JRや私鉄の路線が収益悪化で廃線となると、地元が引き受けて第3セクターで存続することがよくあります。赤字は利用者で補填するから何とか残してほしいという切実な思いです。それが留萌本線の場合は、余分なお金を使ってまで存続の必要なしと、地元にも見放されてしまったわけです。北海道新聞の記事によると、留萌~深川間の運賃は1,070円やけど、赤字を埋めるためには2万1079円にせんとあかんとか。3セク化しても、誰が乗るんやという話です。

 日本は明治時代に「鉄道敷設法」という法律を制定し、国内にあまねく鉄道を網羅する計画を立て、その後変遷を経て昭和の終わりに国鉄が民営化されるまで、この法律は残ってました。

 ちょっと興味が湧いたので調べてみると、この鉄道敷設法なかなか面白い。ここからきわめてローカルな話になるので恐縮です。私のふるさと奈良県南部には全国的に有名な未成線(計画または着工したけど完成・営業に至らなかった線路)の「五新線」がありますが、それ以外になんと、榛原から宇陀松山、吉野町の宮滝遺跡を経て現在の近鉄吉野線の吉野神宮駅に至る「国鉄吉野線」なる計画があったのやとか。知らなんだわ。もし実現していれば、東の名古屋方面から一級観光地吉野への導線が確保され、榛原、宇陀、東吉野の地場産業の振興に多少の影響があったかも知れません。

 その後時代の進捗に伴い人口の都市圏集中と地方の過疎化が進む一方で、航空路線の発展とモータリゼーションの波が到来し鉄道の利用者は激減して、全国的に敷設法が描いた計画は全く実情にそぐわないものとなっていきます。そこで昭和になって計画どおりはムリと諦め、国鉄の分割民営化とあいまって赤字路線をどんどん廃止しはじめました。ここまではよかったのですが、今度は反省を活かせず「整備新幹線計画」という、同じ轍を踏んでしまったのです。seibi.jpg

 本州と北海道間の人の移動の増加から、青函連絡船はいずれパンクするという誤った未来予想に基づき、トンネルを掘って新幹線を走らせようという計画を立て、誰も反対せずに実行してしまった。夢は夢のままでよかったのに、実際にやってしまうところが凄い。難工事の末、世界最長のトンネルを完成させて、膨大な赤字をまき散らしながら今日も新幹線が走ってます。走れば走るほど膨らむ損失は、東京や大阪など都市部のJR利用者が支払う運賃と納税者の血税によって補填されているのです。

 この他にも昭和の終わり頃の運輸白書みると、整備新幹線計画には、山陰新幹線、室蘭新幹線、四国横断新幹線など、今では笑い話にもならない計画がてんこ盛りです。敷設法も整備新幹線計画も、今改めてその必要性を考えるととても賛成する人はいないでしょう。すべては、日本はずっと人口が増え続け、経済成長もずっと続くという幻想のもとに、政治家たちが地方にいい顔したいがために打ち上げたアドバルーンです。そして本当に作り始めたら「やっちゃったなー」と思ってももう止めることはできない。「こんなの、絶対に採算が合うわけ無いし」と思いながらも作り続けるしかありません。その結果、留萌本線や北海道新幹線のように、誰も乗らない、走れば走るほど赤字が積みあがる超不良インフラを抱えることになるのです。

 これほどに科学が進歩しても、将来を的確に予想し正しい計画を策定することのなんと難しいことか。というよりも、計画どおりに進まないことなんて始めから分かってはいるけれど、将来の社会的な損失は無視して自分の利益のために動く連中が多いということでしょうね。

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