地上げの果て

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 コロナウイルス、オミクロン株の拡大で日本中が何やら騒々しい中、新年のお仕事がスタートし日常が戻ってきました。東京では大雪に見舞われ、例によって夏タイヤでスリップしての事故だの立往生で一晩車内で過ごしましただの、おなじみのニュースが伝わる中、大阪は今日も雪の気配など微塵もなくいいお天気、平和な日曜日の朝であります。

20220105_220112357_iOS.jpg さて、毎日の通勤途中、駅で降りて乗り換えるバス停に立つと道路反対側に広がってる光景です。大きな駐車場の真ん中に、ポツンと小さなお好み焼屋さんが建ってます。もちろん、誰かが駐車場の土地の一部を取得してお店を開いたわけではなくて、もとは同じような間口一間半のお店や住宅がズラッと建っていたところ周りの建物が次々と立ち退き、最後にこのお店だけが残ったということでしょう。

 梅田都心からバスで約15分、住宅地が拡がるエリアのかなりまとまった土地で、もしこのお店が無ければきっと周りに建ってるようなマンションがそっこーで建設されるものと思われます。お店には不動産デベロッパーから強烈な働きかけが続いているのではないでしょうか。

 かつてバブルの頃「地上げ屋」という言葉が登場しました。もちろんそれまでにもあったのでしょうけど、この時代特に注目されました。土地の所有者や賃借権者と交渉して立ち退きをお願いし、まとまった土地を形成して転売する不動産事業です。地上げ屋さん自体は、権利者との交渉をコツコツ続けて双方の利益を導く地道で大変なお仕事なんですけど、バブル時代に地上げ屋というと、暴力的な言動でもって脅迫し無理やり居住者を追い出す、その多くは反社勢力の仕事というイメージがありました。

 アパートに1軒だけ残った住人を追い出すために両側の空き室で大量の大型犬を飼育したり、もっと分かりやすい例では住人が出かけてるあいだにどこかから盗んできたトラックを突っ込ませたりと、やりたい放題でした。権利者は、もうたまらんということでわずかばかりの立ち退き料をつかまされ、這う這うの体で引っ越していきました。暴対法の施行で反社が弱体化した現在ではおよそ考えられない違法行為が、自由経済活動の名のもとに公然と行われ、それらはバブル経済の狂乱のはざまで見過ごされていたのです。bubble.png

 実はわたしも地上げにあったことがあります。といっても犬もトラックもありません。学生時代住んでいたアパートが、都市再開発のための新しい道路建設のため取り壊すことになり、ついてはどこかに引っ越してくださいと。交渉にきたのはサングラスにパンチパーマの強面ではなくて、制服着た市役所の人やったと記憶してます。立ち退き料として30万円弱を提示されました。まず引越費用として半額。引越が済んだら残りを支払いますと。

 貧乏学生やった私はもう、否も応もありません。これは降って湧いた僥倖。引越なんて軽トラ借りて来て友人に作業を頼めばタダ同然で済みます。即答「すぐ出ていきます」その後しばらくは、外食のグレードが上がったもんです。

 昔読んだ、ある短編小説を思い出します。辺鄙な山中に高速道路建設の計画があることを偶然知った男が、その山野の一部を事前に取得し、転売金額を吊り上げるため粘りに粘って、それがためになんと高速道路の方が別のルートを通ることに変更され、結局損をしてしまうという話でした。

 冒頭のお好み焼屋さん、条件を上げるために頑張っているのかどうかは分かりませんが、あとどれくらいもつか注目していきたいです。それまでに一度お好み焼食べに行ってみよかな。

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katsuhiko

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奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

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