いにしえを考える

| コメント(0) | トラックバック(0)

 先週、用があって故郷奈良県下をあちこち走り回った際に、いい機会と橿原考古学研究所附属博物館を見学してきました。地元やったんで若い頃に一度訪れたことがありましたが、このたび改装されたと聞いたんで久しぶりに行った次第です。

20211202_014540752_iOS.jpg 改装前がどんなやったかすっかり忘れてしまいましたが、館内は明るくてキレイです。平日の昼間ということで来館者も少なく、じっくりと時間をかけてみて回ることができました。JAFの会員は入館料400円が50円引きになります。もう何十年もクルマでJAFのお世話にはなってませんが、お寺や美術館などの拝観料で思わず得することがあります。最近は会員証がスマホに入ってるんで忘れることもありません。そいやこないだ「永年会員特典」とかでホテルやレストランの割引の案内が届いてました。こんなご時世で使うことはないけど。

 さて、展示されてるコンテンツは奈良県下の古墳や遺跡から出土したものが中心で、中には国宝、重要文化財もいくつかあります。「太安万侶の墓誌」なんて発見当時は大ニュースになったことを覚えてます。銅鏡の展示は質・量ともに素晴らしく、ポピュラーな三角縁神獣鏡はもちろんのこと、貴重な画紋帯神獣鏡もいくつか展示されてます。かつて奈良ソムリエ検定受験のために参加したセミナーで、歴史学者の先生が「画紋帯は学問上の重要性という点で三角縁なんかとは比較にならない」と絶賛してはりました。そんときは「はあ、そんなもんか」と思っただけでしたが、実物をじっくり見たところ「う~ん、そんなもんか」。20211202_021020411_iOS.jpg

 美術館や博物館、お寺の建物ん中もそうですけど、基本写真撮影は禁止です。ところがここでは「一部撮影できない展示物があります」との案内が。つまり原則撮影OKで、ダメなものには個別に撮影禁止の札が付いてるんです。撮っていいものダメなものは何を基準に規制してるのでしょか。同じような土器が並んでて、片方はいいけどこっちはダメなんてのもあって、実に不思議でした。

 見学しててもひとつ思ったのは、墨の偉大さ。刀や墓誌など金属に刻んだ文字は錆びてボロボロんなってX線でも当てないと判読できません。しかし、木片に墨で書いた文字は、水に浸かってたりとか条件が良かったこともあるらしいけど、千数百年経っても書いた当時と変わらずくっきりと残ってます。漢字ばっかしで今でもよく使う知ってる字も多い。これがもっと時代が下って和紙に書いた古文書になるとひらがなが混じって、例の蛇が這ったよな続け字で素人にはまったく読めなくなります。飛鳥、奈良の時代がのちの時代を飛び越してわたしにも読める文字を記録していることに、なんとなく古代から現代に至る連綿たる日本人の営みを身近に感じました。

20211202_015738887_iOS.jpg タイムマシンは、どんなに科学が進歩してもどうやら実現不可能と言われてます。だから、写真も映像もない古い時代の出来事は確実な「証拠」というものがなくて、残ってる資料をもとに想像するしかありません。今正しいとされてる歴史も100%確実ではなく可能性が高いというレベルにとどまり、「諸説あります」なんて人によって考えが違うこともあります。新たに蔵の中を調べたり、地べたを掘ったりで新しいヒントが見つかるたびに新しい説が出てきて「こっちのほうがええやん、これからこれでいこ」となることも、ままあるわけです。

 古(いにしえ)を考えると書いて考古学です。これはいい得て妙で、数学、物理学、化学、医学、生物学、地質学、天文学その他自然科学の分野では検証を極めると必ず正解が導かれます。しかし考古学はまさに考え続けるしかありません。正解と言うものが無く、誰も答えを教えてくれない。それゆえに、いっそう浪漫を求めるひとびとを惹きつけるのです。

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://corridor0108.main.jp/mt/mt-tb.cgi/661

コメントする

WELCOME

CALENDAR

PROFILE

IMG_0227_2.jpgのサムネール画像のサムネール画像

katsuhiko

男 

血はO型

奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

生まれてから約半世紀たちました。

お休みの日は、野山を歩くことがあります。

雨の日と夜中はクラシック音楽聴いてます。

カラオケはアニソンから軍歌まで1000曲以上歌えます

月別 アーカイブ