最高裁判決出たけれど

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 先週、労働関係裁判の重要な最高裁判決が相次いで出され注目されました。

 正規社員と非正規社員の待遇格差に関する訴訟で、おおざっぱに言うと正社員には退職金、賞与、扶養手当や病気休暇やなんかがあるのに、非正規社員には無いというのはおかしい、同じにしてよ。という訴えです。最高裁は退職金、賞与に関する要求を退け(大阪医科大学事件、メトロコマース事件)、扶養手当、年末年始勤務手当、夏期冬期休暇手当、有給病気休暇、祝日給の5つについては訴えを認めました(日本郵政事件)。

 これまで長い長いあいだ、非正規社員は就職時にその条件に納得して雇用契約を締結したんやから、周りの正社員を見て自分もそっちに合わせてよってのはおかしいでしょという理屈で、認められることはありませんでした。

3464067_s.jpg 風目が変わったのはバブル以降です。企業において終身雇用の正社員の割合が急速に下がり非正規の社員がどんどん増えるに伴って、非正規労働者の法令上の保護が一気に進みました。かつては労働契約法、今はパートタイム労働法の規定によって、簡単に言うと「正規社員と同じ内容の仕事させてるんなら同じ待遇にしなさい。同じでなくても違いの度合いに応じた均衡処遇をしなさい」ってことになってます。そこで「非正規でも同じように賞与も退職金も手当も出していいんとちゃうの」という要求が出てきたわけです。採用時の約束なんて関係ないんです。

 相次いで出された二つの判決で、賞与、退職金は出さなくてもいいけど、扶養手当や病気休暇は出しなさいってことになりました。それぞれの要求項目について一審、二審、最高裁と判断が二転三転する難しい裁判でした。

 裁判結果をリベラル系メディアは大きく取り上げ、保守系の扱いは小さいということが判決への評価を表しています。雇用する企業側にとってはやっかいな話であることは確かです。

 しかし、今回の最高裁判決、非正規社員にいついかなる場合でも正規社員と同んなじ手当を出しなさいというわけではなくて、個別の事案で正規非正規の職務内容の差異を勘案して決める必要があることに注意が必要です。今回の日本郵政事件で判決出たからといって、全国のパート・アルバイト従業員が「俺にも扶養家族手当ください」という話にはならないんです。

 さらに、企業側は当然、今後、判決に沿った対応策を講じます。それは必ずしも非正規従業員の待遇改善につながるかというとそういうわけのもんでもない。正規非正規均等にというなら正規の労働条件の方を下げるというやり方もあるわけで、結果的に労働者全体で見た雇用条件が悪化することにもなります。実際に日本郵政は下級審で確定していた住宅手当に関する同様の訴訟の結果、引越しを伴う異動のない一般職の住宅手当を廃止しました。非正規と同じになったんで文句ないでしょってわけです。

 社会環境の変化に伴って、非正規労働者保護を進める政策は評価できます。しかし、現状十分に功を奏しているとは言い難い。企業にしてみたら、非正規の給与上げろというのなら不況とコロナで苦しむ事業者側の救済の方をまず何とかしてよってことになります。朝日新聞なんかは「いけるぞ、労働組合がんばれっ!」と喜んでますが、本当にそれでいいの?っていう話です。

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