海道東征

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 今年の秋はどうもすっきりした晴天が続きません。3連休ということもあり、本当ならばどこかに出かけてしっかりお金を落としたほうがわが国の景気浮揚に貢献できるのでしょうけど、曇天に出端をくじかれ意欲を殺がれ、一方うちの奥さんはテニスの試合に出かけていったりということで、私の今日三連休中日はいちにち自宅警備と決めました。
 
 先週、不思議なコンサートに行ってきました。IMG_7298.jpg
 
 北原白秋作詞、信時潔作曲による交声曲(カンタータ)「海道東征」全編の演奏会です。
 
 皇紀2600年(西暦1940年)を祝賀する奉祝曲として作られた、白秋晩年の大作にして信時の代表作です。日本国の創生、いわゆる神武東征に題材をとり天地開闢から大和政権の樹立までの物語を歌にしたものです。
 
 1940年作曲といいますから戦時色が濃くなっていく時代です。そんな時代に出来たものならいわば軍歌のクラシック版みたいなもんかと思ってましたがさにあらず。日本神話をもとにして神武天皇はじめ神話や古事記に登場する神々や人々の活躍をロマンチックに歌い上げた見事な作品です。
 
 カンタータという、国産では珍しいジャンルの作品、しかも滅多に聞けませんぞよという宣伝にも惹かれて今回聞きに行ったわけですが、まあ、よかった。神話で伝わるところのわが国の草創期が、オーケストラと強靭なソリストたち、それに大合唱団によって終始壮大な雰囲気で表現されていました。
 
 会場見渡すと年配の人たちが目立ちますが、若い世代も大勢いてほぼ満席の状態です。この公演への関心の高さがうかがえます。今回の私たちの席はなんと最前列、ステージきわきわのところで、手を伸ばすとビオラの演奏者の足をつかめてしまいます。そんなことしませんけど。ステージの全容は皆目わからず、ソリストなど一人も見えない。しかし聴いている分には支障がなく、ザ・シンフォニーホールの音響効果に感心しました。
 
 カンタータは歌が主役です。歌詞があるから演奏の主題、作者の意図が直接聴衆に伝わって間違いなく理解されます。とっても分かりやすい。合唱団の皆さん、児童合唱の子供たちも含めてよく練習していると感じました。また、子供たちの出番は2時間近い演奏時間のうち後半のほんの少しです。ずっと待ってないといけないのが可哀想やなと、変な心配してしまいました。
 
 戦後は日本神話などナショナリズムの香り漂うものが極端に白眼視されてきた傾向があります。この名作も、そんなとばっちりによってこれまでまったく演奏されなかったとか。近年見直されて演奏される機会も増え、CDもたくさん出てきました。いいことです。
 
 日本が先の大戦でわが国と周辺諸国に重大なる惨禍を招いたことは厳然とした史実であり、そのことを真摯に反省し将来に向かって絶対に繰り返してはならないと肝に命じることは当然であります。これまで必要な謝罪と賠償を尽くしてきたことも深い反省と自戒の現れといえるでしょう。しかし同時に、わが国の偉大な歴史と世界に誇るべき素晴らしい文化を後世に伝えていくこともまた、国民の重大な責務であって、それは平和を希求し戦争を起こさないこととはまったく別次元のお話なのです。
 
 もし、同様にあまり演奏されることがない埋もれた傑作があるとするならば、もっと世に出てきてほしいもんです。

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katsuhiko

男 

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奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

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雨の日と夜中はクラシック音楽聴いてます。

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