日に日に春めいてまいりました。スギの花粉飛び交うこの季節、憂鬱な人も多いそうですが、幼き頃より吉野杉の美林地帯で育ったわたしにとっては、花粉症などまったく縁のないシロモノです。アレルギーに苦しむうちの奥さんから「この野蛮人め」と罵られるのも春先の恒例となりました。代われるもんなら代わってやりたいわ、ホホホ。
さて、以前、買った本を処分したことがないということを書きました。蔵書を手放せない性格が災いして溜まる一方やったわけですが、このたびきっかけがあって文庫本を一斉に手放しました。
職場が事業の一環として職員からも寄付金を募っており、いろいろ方法があるうちのひとつ、古書業者と連携して不用となった蔵書を売った代金を寄付に回すというキャンペーンが始まったのです。少しでも役に立つものならばと、一念発起しこの機会に処分することとしたわけです。
自分で古書店などに持ち込むのは手間がかかるし、宅配便で送るにもそれなりの費用がかかりますが、これらを職場が負担してくれます。実にいい機会です。
かといって、やっぱりどの蔵書もそれぞれに思い出があり、どうしても手放したくないものも多い。そこで手始めに文庫本からということで、まず家中に散在する文庫本を集めてみることにしました。
押入れの中、本棚の隙間、タンスの中などあちこちからまあ、でるわでるわ。みるみる部屋の床を埋め尽くしていきます。4、5百冊はありそうです。これ全部、この狭いマンションに収まってたのか。およそ奥さんとたった二人だけで読んできたとは思えない量ですが、これまで捨てたことなかったんやから当然と言えば当然か。
推理、SFから歴史、恋愛小説、実に雑多なジャンルの背表紙を眺めるに連れ、あらためて節操のない乱読ぶりが見て取れます。思えばこれだけの量の本を読むのにどれだけの充実した時間が流れていったことか。お世話になりました。中には何となくストーリー覚えているものもありますが、そうでない方が圧倒的に多い。いかに身についてないかということですわ。かといって、も一度読もうとも思わない。そんなことやりだすと、ほとんど処分できなくなります。ここは心を鬼にして、バッサリといきます。
用意した段ボールに詰めてみると、9箱となりました。
連携してる業者に連絡したところ、クロネコさんが集荷に来てくれました。着払いの伝票には荷物一個約900円の金額が記載されてるんで、送料だけで8,000円強ということになります。箱の中身はおよそ値段がつきそうにない古い文庫本ですよ。多少のお金にはなっても送料のこと考えると多分赤字ではないやろか。こちらは、スッキリと処分するきっかけとなったことで実にメリットがあったわけですが、何とも申し訳ない次第です。
学生時代、新刊書は高くてあまり買えず、もっぱら文庫本買ってました。どうしても読みたい場合は図書館で借りることもあったけど、読んだ本は手元に残したい方やったんで文庫化を待って買うことが多かった。リーズナブルなお値段は貧乏学生にはありがいもんでした。小学生の頃、新刊の薄い文庫本を80円で買ったことを覚えてます。今では文庫とはいえページ数が多いと1,000円超えるのんもあったりで、この間の物価の上昇をはるかに上回る高騰といえます。もはやそれだけの価額を設定しないと出版業がたちいかないということでしょう。
ネット万能で便利この上ない世の中ではありますが、じっくりと読書に耽る贅沢な時間を大切にしたいもんです。
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