大和は西方

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 奈良県が主催して「日本書紀を語る講演会」というのんをシリーズでやってます。奈良県内の市町村において、いろんな講師が『日本書紀』の魅力を語る連続講演会(全11回)やそうです。奈良検定1級保持者の私としては来るべきまほろばソムリエ検定の受検のためにもぜひ参加しておきたいところです。と言いつつ、受検の準備はまったくさぼってて、この分ではいつになったら本腰入れて勉強を始めるのか実に心もとないという実態はあるのですが。
 
 それはさておき、そのシリーズのうちのひとつ、作家、五木寛之さんの「日本書紀の光と影」という講演に応募していたところ幸い当選したので、昨日行ってきました。
 
 大御所の人気作家ということもあって、かなりの競争倍率があったやに聞きました。ラッキー。
 
 会場は奈良県社会福祉総合センターというから、てっきり奈良市内やと思ってたところ、さあ出かけようという時間になって調べてみると橿原市やんか。近鉄電車畝傍御陵前駅前といいますから、その昔高校時代に通学していた沿線です。畝傍山がすぐ隣にそびえています。
 
 開場時間の13時ピッタリに会場に到着するよう電車で出かけたところ、やはりというかすでに入口には長蛇の列ができてました。も少し早く来れば前の方の席がとれたのに。これはしまった。しかしさほど大きなホールでもないのでまあいいとしましょう。
 
 会場のホール内はほぼ全員が中高年の人たちで占められてます。五木寛之の本と思しき書物を読んでる人もいます。80歳を過ぎてなお意欲的に著作を発表し続ける五木さんの、人気の高さを感じました。講演開始を待つ間、期待で満ちた雰囲気が募っていき、MCの紹介もそこそこに五木さんが登場すると静かな興奮はマックスへ。
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 演題「日本書紀の光と影」ということなんで、五木さんも日本書紀を研究してて学問的なお話をされるのかと思いきやそうではなく、かつて親交のあった小島憲之という国文学者の著作「ことばの重み」に関して、この中で取りあげられた「暗愁」という漢語について多くを語られました。現代ではもはやほとんど用いられなくなった言葉ですが、大正天皇や伊藤博文が漢詩を詠む中で使ってたとか。どこからともなく漂ってくる愁いというような意味なんやそうですが、確かに聞いたことがない。ネガティブな意味合いの言葉は皆があまり使わなくなって、結局は廃れてしまう例が多いと。しかし、人生には光もあれば必ず影ができる。憂いの中にいるからこそ希望や目的を求める気持ちが湧いてくるのです。そんな話でした。
 
 肝心の日本書紀については、そのものの研究ももちろん大切やけど、それとともに書紀とともに歩んできた多くの日本人、本居宣長や津田左右吉などの著名な研究者からわれわれ一般人までが、それぞれの時代や社会の中で、自らの気持ち、思いとともにどのように書紀と関わってきたかということが重要なのである、ということを繰り返し強調しておられました。IMG_5918.jpg
 
 なるほど、古事記、日本書紀は神代と歴史をつなぐ日本人の心の拠りどころであり、キリスト教徒にとっての聖書に匹敵する、いわば日本人のアイデンティティーの根源とも言えます。
 
 五木さん、ここ奈良については思い入れが強い。三輪山、大和三山は陽が上る大和でそれに対して二上・葛城・金剛の峰は大津皇子の墓があったり、峰を超えた難波の地には多くの王族が古墳を造ったりと、いわば陽が沈む大和であると。そういう意味で、大和でも西方に心惹かれるとか。そいえば前に詳しく書いた、氏の傑作「風の王国」も二上山が舞台でした。
 
 昔から好きな作家さんのひとりで、代表作はたいがい読んでます。今回、直にお話し聞けたことは実にラッキーでした。日本人とは何かという深遠な命題、また、仏教についても極めて造詣が深い五木さんのお話は、正確で美しい日本語で、語られるそのままを文章にしても何ら違和感がありません。ご高齢にも拘わらず(失礼)全くよどみなく、時に笑いをとりながら朗々と語られる、ソフトではあるけれども実に力強い口調は、聴く人人を強く魅了します。スゴイ人です。一流の人物の在りように直にふれることは実に楽しく、濃密な時間が静かに流れていきます。
 
 わたしもこんな爺さんになりたいもんや、としみじみ思いましたよ。ムリか。

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katsuhiko

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