ラジカセのこと

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 今を去ること40年前!今や厚顔のオヤジと成り果てた私が紅顔の美少年やった頃、確か中学校1年生の砌と記憶しています。お年玉やお小遣いを貯めて初めて買ったラジカセが、稀代の名機の誉れ高いSONYのCF-1900、愛称「pro1900」という機種でした。

pro1900.jpg 今でこそ海外のメーカーの後塵を拝するSONYですが、当時は"RISING SUN 日本"の旗手として世界を席巻していました。エレクトロニクス分野での日本製品の地位は微塵も揺るがず、世界中が競ってMade In Japanを買い求め、その中心にSONYが君臨していました。その後ウォークマンを世に送り音楽の楽しみ方に革命を起こす、いわば革命前夜の時代、ラジカセの全盛期でした。

 当時の中高生は、ひとり1台ラジカセ持ってて、深夜放送を勉強の友とし、ヒット曲はAMよりも高音質なFM放送からカセットテープに録音しライブラリを増やしていくのがその頃のポップカルチャーでした。

 そんな時代にあって私が愛機に選んだpro1900。カタログ価額は4万円弱と、同時期SONYのフラッグシップモデルやった「Studio1980」に次ぐ高価設定。1980と比べるとはるかに小型でスタイリッシュ。後の時代も私はSONY製品のシンパで、カセットデッキやコンポステレオ、テレビにビデオデッキ、それにもちろんウォークマンと実にさまざまなSONYを愛用してきましたが、その最大の理由はデザインの良さです。他のメーカーの同等製品に比べて機能やコスパで劣ってても、デザインの良さはズバ抜けてました。pro1900は40年後の現代でも余裕で通用する、洗練されたフォルムです。

 その愛機、大学入学で上京するまで大事に使ってましたが、なんと実家が何回か引っ越しを繰り返すうちに失われてしまったのです。東京にも一緒に連れて行っときゃよかったと後悔しても後の祭りです。

 爾来40年の歳月を経て、青春時代を共に過ごしたあのラジカセをどうしてももう一度触ってみたくなり、忘れ物を取りに行くような気持ちで入手を試みることとしました。デッドストックなどあるはずもないので、オークション取引に頼ることとなりますが、探してると何とオークション市場でも今もってpro1900の人気は高く、半ばジャンクと化した中古機が高値で取引されていることが分かってきました。IMG_4096.jpg

 こまめにチェックし始めて1年も経ったでしょうか。そこそこの状態のんが出品されたので、買い時と思い落札しました。

 いざ商品が届いて梱包を解きデスクに置いてみると…おお!まるで空白の数十年など一気に消えてしまい、ずっとこの部屋にあったかのように馴染んでいます。不思議なことに懐かしいという気持ちが湧きません。このラジカセと共に過ごした若き日々の記憶が今もってその存在を違和感なく受け入れているのです。なんとも変な気分です。まあ、嬉しい(^^)

 さて、この中古品、もちろん動作は不完全です。スイッチいれるとラジオは鳴りますが、ファンクションスイッチ押しこんでもテープは作動しません。つまりは壊れてます。普通、道具は壊れたら捨てるもんですが、逆にゆえあって壊れたのんを買ったというわけです。ではもう一段階もどして完全に動くように修理したろと思い至るまでに、さほど時間はかかりませんでした。

 かといって私は純粋文系人間で精密電子機器の修理なんて逆立ちしたってできるはずもなく、専門業者に依頼することになります。

 いろいろ調べてみたところ、SONY自体の修理サービスはもちろん、いろんな家電修理サービス業者にしても「もう部品が無くて、サービス対象外」ということで、そらそうでしょうね。40年前の製品と言ったとたん絶句されたところもありました。いかにバカな依頼かということです。

IMG_4091.jpg そんなこんなでたどり着いたのが、栃木県にある「アトリエ4R」という業者さんです。70年代80年代のラジカセを専門に修理しているというニッチなコンセプトのお店で、おそらく日本で唯一ではないでしょうか。事前にメールで状態を伝えたところ見積もりをいただくなど丁寧に相談にのってもらい、お願いすることにしました。たくさん依頼があって修理着手まで3カ月待ちとか。依頼者たち、おそらくは私と同世代でかつて青春時代をともに過ごしてきたラジカセをなんとか蘇生させたいと考えるオヤジたちでしょう。気持ちはよくわかります。

 修理は程度によっていろんなコースが用意されていますが、せっかくなので完全オーバーホールを依頼しました。宅配便でpro1900を送り気長に待ってると、ほぼ3カ月経って「修理完了しました」との嬉しいお知らせが。

 帰ってきたpro1900、さっそく鳴らしてみると、「おお!」ほぼ完璧に動作します。音質そのものは、昨今のデジタル機器とは比べるべくもありませんが、当時聞いてたテープの音、ラジオの音がよみがえってます。嬉しい(^^)

 現代ではデジタルオーディオ機器の進歩でほぼ原音に等しい超絶クリアな音楽がお手軽に楽しめます。ラジオもインタネット放送で、電波状態関係なしに高音質で聴くことができます。実用の点考えると、今や40年前のラジカセの出る幕はまったくありません。はっきり言って貧弱な音ではあります。しかし、今回の修理はもちろんデジタル機器に匹敵する性能を求めたのではなく、それらの役割を担ってた40年前当時の空気と記憶を今によみがえらせるために必要な投資であったわけです。中古品の入手と修理費用合わせて新品定価の2倍近い金額を費やして、他人から見ればいったい何をやってるのかということになるでしょう。しかし今、脇机の上にチンと納まってるpro1900の姿を眺め、ラジオ聴いてるだけで気持ちが実に寛ろいでいきます。

 どうも近年、実用性以外のところに変な価値を見出し始めました。これは、オヤジ度がさらに進んできたということか。う~ん。。。

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katsuhiko

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奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

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