寄らば楠の蔭

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 職場に隣接する城北公園には、大きなクスノキがたくさん植わってて、この時期、舗道に大量に落ち葉を降り積もらせています。落葉樹が秋に紅葉を経て葉を落とすのに対して、常緑樹のクスノキは晩春から初夏に葉を落とすのです。葉の寿命は1年ですが、古い葉を落とすとすぐに新しい葉が生えてきて入れ替わるので落葉樹のように枝に葉のない期間がありません。

 落ち葉を踏みしめながら見上げると、そこは冬木立の枝ではなく柔らかな黄緑色の葉をつけた枝が幾重にも伸び、晩春の陽光に映えています。常磐木落葉(ときわぎおちば)といって、5月の季語にもなっているそうです。秋の情緒では主役を張れる落葉も、桜の花が散り徐々に若葉が茂りはじめるこの時期には気にとめる人とて少ないのに、歳時記はしっかりと季節感を与えてます。昔の人はエライ。

 クスノキは大木になりやすく、全国の巨木ランキングでも大半をクスノキが占めてて、その多くが国や都道府県の天然記念物に指定されてます。日本最大とされている樹も鹿児島県の「蒲生(かもう)の楠」。クスノキです。NAGO.jpg

 学生時代、奈良の実家への帰省の際には名古屋で新幹線と近鉄とを乗り継いでたのですが、名阪特急往復の車窓の眺めでいつも楽しみにしていた巨樹があります。一面田んぼが広がる伊勢平野の中にただ1本悠然と屹立しているさまが走る列車から見えるのです。調べてみると「長太(なご)の大楠」という、やはり有名な巨樹やとわかりました。

 たいがいの巨木は山中や神社の境内やなんかにあって、その周りに多くの木立を従えてるものですが、このクスノキの周りは1本の高木もない。それどこか、まっ平らの田んぼの真ん中で、近くに建物など人工物もないもんやから、近鉄の線路からはおそらく4~500mはあると思いますが、それだけ離れてても実によく見えるのです。

 一度間近で見上げてみたいと思いながら、いまだ果たせずにいます。(写真はgoogle S.V.から拝借)

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 ところで、こないだの日曜日、お天気がよかったので久々に奈良を歩いてきました。これまであまり訪れることのなかった近鉄奈良駅の北側に広がるエリア「奈良きたまち」をぶらついてきたのですが、般若寺の近くに神社が一座鎮座しています。奈良検定のテキスト読むまで知らなかったのですが「奈良豆比古神社」という由緒ある神社で、ここに伝わる民俗芸能の「翁舞」は能楽の原典として国の重要無形民俗文化財に指定されています。

 それはさておき、ここのお社の裏に直径数十メートル、スリバチ状に凹んだ大きな窪地があり、そこに1本とてつもない巨木が立っているのです。県の天然記念物に指定されているこの巨樹もクスノキです。樹齢約1000年。根元の幹回り12m以上あり、すぐそばに立って見上げるとその迫力に圧倒されました。

 神社の周囲は閑静な住宅地で、鎮守の森とはいえこんなイビツな地形など通常ならそっこー整地、利用されてたはずですが、いにしえの地形のまま保たれてるのは天然記念物であるこの巨樹のせいやろと思います。

 樹木は地球上最長寿の生命体でしょう。もとは一粒の種子から芽吹いた命がこれほど巨大に成長を遂げる自然の神秘を思います。しかしそのためには人でいえば何世代もの長い長い年月を要します。過去、人の都合でどれほどの樹木が切り倒されてきたことか。いきなり巨木をこしらえることはできないわけで、自然災害はしかたがないとしても、少なくともいま存える名木たちは大事にしていってもらいたいもんです。

 日本最大の巨樹「蒲生の楠」も、いちど見てみたいなあ。九州出張でもあれば、足を延ばそうかと思ってます。

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katsuhiko

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