夏の神域

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 所用あって実家を訪れたついでに、吉野山に登ってきました。

 桜の終わった吉野山はいわば完全シーズンオフですが、照りつける太陽の下、樹樹の緑が一層鮮やかなこの時期もなかなかいいものです。大阪と比べるといくぶん涼しく、湿度も低めに感じます。

 吉野川が流れる中央構造線に向かって南から馬の背中状にせり出した吉野山は、古より金峯山(きんぷせん)といわれ、霊山大峰の入り口にして超強力なパワースポットです。また歴史的にも重要な役割を担い、日本史の要所要所で登場してきます。

 今回来たのは、1月に受検予定の奈良検定1級に向けて少しお勉強をという思惑から、奈良県内に4つある水分(みくまり)神社を訪れてみようと思い立ったからです。4つのうちのひとつ吉野水分神社が、ここ吉野山上千本にあるのです。吉野山でも、水分神社から金峰神社がある上千本、さらに奥千本にかけてはまだ行ったことがありません。

P7153777.jpg 近鉄吉野駅前から七曲がりと呼ばれるつづら折りの道を上り切ると、尾根に沿って点在する数多くの寺社をつつみこむように旅館や土産物店、飲食店が軒を連ねています。幼い頃から幾度となく登ってきた馴染み深い街並みです。花見シーズンは大変な人出で、通りを歩いていても満員電車なみの混雑なのですが、この時期はひとかげもまばらで散策にはちょうどいい。吉野山のシンボル、蔵王堂がある金峰山寺に立ち寄ると、若い外国人女性4人のグループがきゃあきゃあ、歓声が境内に響き渡ってます。

 この日は雲が広がっており、ときおり陽が差すかと思うと雨がポツポツ落ちてきてはすぐに止むという妙なお天気。カンカン照りよりはよほどいい感じの日和でした。それでも目的の水分神社までたどりついたころには、頭から水かぶったごとく汗だくになってました。
 
P7153771.jpg 早速境内に入ると右手の山側にお社が鎮座しています。3棟連なったかたちのちょっと変わった造りの堂々たる社殿です。境内の雰囲気が奈良市内など平地にある多くの神社と少し違います。平地の大きな神社は、なんというかデラックスな感じで親しみやすい、そんな感じがします。一方、周囲を深い樹叢で囲まれた山中のこのような神社はどうも近寄りがたいというか、畏れをひときわ感じるのです。
 かの前登志夫先生は著書「吉野紀行」でこの神社のことを次のように記してはります。

 この社殿にいる私をすっかり安らかにさせないのは、社殿の配置と構造にばかりあるのではない。神前の優雅と、アルカイックな破壊力の交錯のせいだと思う。この神域に馴れるには、いつ来ても時間がかかるのだ。私たちの過去にもった最も艶麗な造形が、最も荒々しい風雪と呪縛によって自然に還ってゆくいたいたしい旋律かもしれぬ。

 美しい調べのような見事な文章はともかく、やはり神社は山深くにあればあるほど凄みが増すのです。

 ところで、鳥居のそばの石柱になんと 「24,000円 文部省」 と書かれている。驚いてよく見ると裏面に「大正○○年…」とあって納得。現代ではあり得ないですもんね。
 
 お参り済ませて、近くにある花矢倉展望台で弁当にしました。山全体が一望できます。「ザ・吉野山」という感じのポスターやなんかは、ここからの景観です。おにぎりをぱくつきながら眺めを堪能していると、さっき蔵王堂前にいた外国人ガールズが登ってきました。隣りでお弁当を広げはじめたので、眺めのいい場所を譲って少し話してみると、日本語の先生とその生徒さんたちやとか。
 "How are you ... Where from ?  States ?"
 "Yeah. And we've climbed on foot from the station." "Oh,really !?  Good job ! "
 そんなに息をきらした様子もない。なんと。てっきりバスか車で登ってきたと思ったのに、たいしたもんです。

 ここからさらに上、奥千本にかけては次回の楽しみとして、降るセミの声を浴びながら一気に山を下りました。紅葉の頃、また来ることといたしましょう。

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katsuhiko

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奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

生まれてから約半世紀たちました。

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雨の日と夜中はクラシック音楽聴いてます。

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