「日本左翼史」

| コメント(0) | トラックバック(0)

 テレビで北陸の被災地の状況を視るたびに心が痛みます。復興に向けてできる支援を考えていきたいところです。あちこちで募金しています。

 さて、明日から週明けまでしばらく旅にでますので、平日のこんな時間にブログを更新しています。

 年末からお正月にかけて、こんな本を読みました。

 講談社現代新書「日本左翼史」全部で4冊。池上彰さんと佐藤優さんの対談集のかたちで、明治の始めから現代に至るまでの日本の左翼の歴史を分かりやすく解説したものです。最初のんは「真説 日本左翼史」終戦から1960年まで、2冊目が「激動 日本左翼史」1960年から1972年まで、3冊目が「漂流 日本左翼史」で1972年から現代まで、そして最後が「黎明 日本左翼史」1867年の大政奉還から終戦まで。

20231106_051300104_iOS.jpg 1巻から3巻目までは歴年に沿ってて年代順、終戦からスタートして現代に至るまでの左翼の歴史を解説し、最後にくるっと昔に返って明治時代の左翼思想・運動の誕生から終戦までの、共産党が非合法であった期間をもってきてます。

 おもしろかった。池上さんは、テレビでよく見る司会者で、現代の内外の社会情勢をおバカなタレント相手に分かりやすく解説してる物知りなおじさんというイメージがありますが、この本の内容は実に知識と教養と蘊蓄にとんでおり、素人にも実に分かりやすく書かれてます。そもそも対談なんで、話しことばで解説は進んでいきます。これがいい。

 相方の佐藤優さんは、作家ということになってますが、もともと外交官でかなり前に鈴木宗男と連座してヘタを打って、なんだかよく分からん罪で有罪になって外務省辞めた人です。改めて調べるとなんともすさまじい経歴です。現代日本に君臨する最強の論客の一人です。

 対談形式になってますが、対談した内容をそのまま書き起こしたものではないように思います。次から次にでてくる左翼関連の事件が起こった年代とその内容、関係する膨大な数の左翼活動家のひととなりや(生没年を含む)経歴、そして重要な文献や証言など、こんなんアタマに入っててソラで言えるわけがありません。もし本当に二人の対談した内容をそのまま書いたんやとするならば二人とも化け物です。きっと、あとから内容を分かりやすく精査して、それを対談の形に構成し直したのでしょう。おかげで、非常に分かりやすく明快で最後まで一気に読めました。

 左翼というものに対する日本人の一般的な理解を前提にしたうえで、あまり知られていないドラマティックなエピソードなども効果的に交え、その本質を説き明かしていきます。私も概ね知ってることが多くて興味が募り、内容の理解が深まったと思います。

 二人の説くところに一貫しているのは、日本の左翼勢力といえばすぐに共産党が思い浮かぶけど、共産党なんて実は本来の左翼運動とは異なった相いれないゲスな集団であるということです。2巻目の巻頭「はじめに」で、1巻目出したあと「共産党を宗教的に信奉する勢力以外には好意的に受け止められた」と書いています。つまり痛いところを突かれた共産党支持者からは叩かれたということでしょう。

 左翼の歴史というと、明治から終戦に至る歴史の中で活動家に対する激しい弾圧があったことが思い浮かびます。しかしそれ以上に、昭和の60年安保に始まる過激派や学生運動がもっとも印象深いところです。当時日本中の多くの学生が革命を叫び学生運動に身を投じていきました。それはさながら大規模な集団ヒステリーの様相を呈し、過激化していきました。多くの大学キャンパスは破壊され、バリケード封鎖され荒れ果てた東京大学では入学試験を中止するに至りました。まさに前代未聞の出来事です。こんなことは許されてはならないのですが、当時の世相ではそれもまたやむなしとする空気があったのです。

 今冷静に考えれば、学生を中心とする一部の新左翼がゲバ棒をふりかざして何を訴えたところで革命など成るはずもなく、社会全体にとっての迷惑以外のなにものでもなかったのです。しかし、高度経済成長によって生じた社会の歪みを実感し始めた多くの若者にとって、それはまさに違法薬物のように蔓延していったのです。

 そして、東大安田講堂の陥落によって多くの学生が目を覚まし、衰退した新左翼に対する社会のごくわずかな期待と憐憫も、先鋭化し武装した日本赤軍による一連の凶悪事件によって完全に失われ、日本の極左は完全に終焉を迎えました。「左翼史」では、それらの経緯についての詳細な分析から、今後の左翼勢力の行く末までも詳細かつ分かりやすく書いてくれてます。非常に情報量が多い。しかも分かりやすい。

 日本における左翼思想がいかにとんでもないものであるか、日本において共産党なんかがなぜにいまだに一定の支持を有し、あまつさえ国会に議席を有するのか。日本国と日本人を邪悪な共産主義勢力から守るその戦いにおいて、敵を知るために「左翼史」は非常にためになります。おすすめです。

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://corridor0108.main.jp/mt/mt-tb.cgi/3499

コメントする

WELCOME

CALENDAR

PROFILE

IMG_0227_2.jpgのサムネール画像のサムネール画像

katsuhiko

男 

血はO型

奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

生まれてから約半世紀たちました。

お休みの日は、野山を歩くことがあります。

雨の日と夜中はクラシック音楽聴いてます。

カラオケはアニソンから軍歌まで1000曲以上歌えます

月別 アーカイブ