環濠で身に寸鉄を帯びず

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img001.jpg 先週、書斎でガサゴソ探し物をしているうちに、書架の普段は目につかないところから1冊の古い本が現れました。

 浜野卓也著「堀のある村」という児童書です。私と同世代の奈良県出身なら「あぁ」と思われる人も多いでしょう。現在の大和郡山市にある「稗田」という環濠集落を舞台としたお話です。

 稗田といえばアレです(^^)。天武天皇の時代に古事記を編纂した稗田阿礼ゆかりの集落ということで、阿礼さんを祭る賣太(めた)神社があります。

 などと知った風に言ってますが、実はメタ神社なんて、つい最近奈良検定の勉強するまで知りませんでした。県南部出身のわたしには郡山はあまりご縁がなかったのです。

 さて、この本、買ったとすれば小学生の頃やけど、覚えてない。環濠集落のことは高校時代の日本史でもやったし、郷土の特色として知識はあったけど、どんな話やったか皆目記憶がない。このたび目についたのも何かの導きと思って、何十年ぶりかで読んでみることに。

 時は室町。稀代のボンクラ将軍足利義政のおかげで日本の歴史上民衆がもっとも悲惨な目にあっていた時代、稗田の集落に生まれた主人公がみやこに出て武士となったものの、応仁の乱前後の乱世の中でサムライを見限って、ふるさと稗田に帰って権力者たちの横暴から村を守るために環濠を巡らし、超然とした自治集落を築いていく過程を描いています。P2014291.jpg

 1時間半ほどで読み終えました。まったく覚えていない。おそらく買ったものの読んでなかったのやと思います。人生でいちばん物覚えがよかった時代、読んでいたらまず忘れるはずがないですもん。

 有名な稗田環濠集落ですが、行ったことがない。夜遅くまで本を読んでムクムクと興味がわいてきたもんやから、天気もいいしというので、昨日見学に行ってきました。

 わが家からJR乗り継いで、郡山までほぼ1時間。文庫本片手にiPodでモォツァルトなど聞きながら、いつもどおりのお気楽な行楽気分で2つ目の乗換駅ホームで電車を待っているときに、ふと気がつきました。「財布持ってない」

 出がけにスマホやICOCAなどを通勤かばんからリュックに移した際に、財布を触った記憶がない。リュックの底まで探してみるも、やっぱり入ってない。やば、忘れてきた。( ̄▽ ̄;)!!

 旅はハプニングを楽しむもの、なんて先日書いたけど、こんな事態はそれ以前の問題ですわ。まったく情けない。行程はほぼ半ば以上に進んでます。さてどうしたものか。しばらく思案したのち、このまま予定どおり行くことに決しました。交通費はJRのみなのでスマートICOCAでOK。食事も飲食店はあきらめて駅前のコンビニならICOCAで買えるやろということで。お金まったく持ってないというのは何とも不安なもんです。武器をもたず丸腰で戦場にいる気分。HIEDA.jpg

 郡山駅に降り立ち食料を買い込み、少し歩けば辺りは大和平野の真っただ中。長閑な田園風景が広がります。20分ほど歩くと目指す稗田集落にとうちゃく。確かに堀がある。沿って歩いてみるとぐるっと集落を囲んでいるのが確認できます。物語では攻めてくるサムライに対抗するため村人が力を合わせて堀を築いてこれを撃退する様子がいろんなエピソードとともにドラマチックに描かれてますが、実際のところはどのように形成されたのか詳しいことはわかっていないそうです。奈良盆地にはほかにも似たような集落がいくつかあるらしい。

P2014280.jpg たとえばこれが大阪市内のような都会であれば、堀などは無駄なスペースとしてすぐに埋められてしまうでしょう。実際に長堀の運河は戦後に埋め立てて大駐車場になってしまいました。奈良盆地という、ほどよい田舎であったことが幸い、いにしえの遺産が伝えられていくのやなあ、と堀端にたたずみ思いにふける一文無しのオヤジひとり。

 集落の南東に鎮座まします賣太神社にお参りしたはいいけど、今日は事情あってお賽銭を上げることができません(^^;)。どうか勘弁してください。

 このあとてくてく北上し、平城京羅生門跡を訪れたのち駅に戻って帰路につきました。本当ならせっかくなので郡山城まで足を延ばしたかったのですが、懐事情によりお城は次の機会にとっておくこととしました。

 大和平野の空気は澄み、取り囲む遠くの山々がきれいに見えた小春日和のいちにちでした。

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コメント(3)

一報くだされば、延足と帰り道にはお役にたてたのに。
つい先日も友人から同じようなLineが入ってきました。
「今どこにいる?財布忘れた。ラーメン代払いにきてくれ。」
3月から郡山城の横の踏切を通るのが通勤路になります。

あいうえだぁ様

次回、非常事態のおりには、ぜひよろしくお願いします。
でも、「さぁ、一緒に走りましょ」というのは、
ちょっとカンベン(^^)

今の世ならキャッシュレスがすすんでペイペイでも何でも使えたのにね。
こういうエピソードがありましたっけね。
全く覚えていない、完全に忘れてた。

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katsuhiko

男 

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奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

生まれてから約半世紀たちました。

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雨の日と夜中はクラシック音楽聴いてます。

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