先月の終わり、仕事で上京した際にちょっと時間があったので、いつか行きたいと思ってた東京国立近代美術館行ってきました。初めてです。
われわれ世代は、小学生時代の空前の切手ブームの頃に記念切手を見てその生涯で初めて美術作品に触れた人が多いということはかつて書きました。長じてから「あ、これ切手でみたことあるやつやん」というわけです。私もまさにそれで、浮世絵のみならず近代の美術作品も同じで、実に多くが切手になってます。
そのうちのひとつ鏑木清方の「築地明石町」という婦人像のほんまもんをいつか見たいと思ってて、ふと思い立って猛暑の中、竹橋まで足をのばしたのです。結論から言うと、お目当ての作品を観ることはできませんでした。会場内をひととおり回ってもかの「築地...」は見当たらない。アレ?と思ってフロアで監視してるスタッフさんに聞いてみると調べてくれて「鏑木は今回の展示には含まれてないようです」。
美術館てのは、その所蔵物のすべてを常時展示しているわけではないのであって、何らかのイベントを打って、自分ちで持ってるのんと他から借りてきた作品を並べて期間を決めて企画展を開催し、終わったら次の企画展をと回していくのです。同じ絵を常時展示してたら、新しい観客は来てくんないのであって、これは道理です。
「築地...」はこの美術館の所蔵品ではあるものの、常設展示されてる作品ではないという下調べができてなかったのです。失敗。
で、そのときやってた企画展てのが、昭和100年戦後80年にちなんだ「コレクションを中心とした特集 "記録をひらく 記憶をつむぐ"」という、先の戦時中に描かれた戦意高揚のための作品や、その後書かれた反戦を意図した作品を集めたイベントでした。暗い時代で、美術作品というよりも戦意遂行のプロパガンダ満載の作品が中心で、それが実にリアルで圧倒されます。こんな時代が二度と来てほしくない。来させてはいけないという思いがふつふつと湧いてくる一連の展示でした。美術館の思惑は成功したことになります。
田村孝之介「「佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す」
藤田嗣治「アッツ島玉砕」
藤田嗣治といえば、ケッタイな髪形と風貌でいかにも前衛芸術家みたいな印象がありましたが、こんな暗い絵も描いていたとは知らなんだ。当時は世に迎合し、こんな活動しかでけんかったのかも知れませんが、なんだか幻滅しました。
和田三造「南風」
中村彝「エロシェンコ氏の像」
岸田劉生「道路と土手と塀」
「築地...」はみられなくても、有名な作品がいっぱい出展されてました。上の三点はすべて国指定の重要文化財です。国宝・重要文化財の絵画といえば江戸時代以前の日本画というイメージがありますが、明治以降の近代の洋画でも重文に指定されてるものがあるのです。確かにお上手な作品ではあれど、多くの優れた作品群の中からなぜにこれが特別の重要文化財なのかとも思います。素人には分かりませぬ。特に中村ツネさんの肖像画とか岸田劉生の道の絵なんてよくあるほかのんと比べてどこがどう優れてるのか、もひとつ分かりません。なるほど、わたしには美術的センスがないのだなと改めて納得した、猛暑の夏の日の午後でした。
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