「193の国と地域が...」でおなじみの国連総会が始まり、加盟国の一般討論演説がありました。加盟国の代表のすべてが演説できます。かつてキューバのカストロ首相が持ち時間15分にもかかわらず4時間半しゃべり続け、共産圏の非常識を世界に露呈したこともありました。演説は参加国が必ず聴かないといけないものでもないらしくて、登壇する国によっては会場内ガラガラなんてこともあるみたいです。しかし、オリンピック同様に世界中の国々が国際的にアッピールする大きなチャンスであるとは言えます。よくも悪くも地球人類は「国」単位で動いているのです。
英国の隣にシーランド公国という独立国があるそうです。しかし、ここを独立国家として承認している国はひとつもなくて、自称国家にすぎません。国といっても島ですらなく、大戦中に英国軍が北海の沖合10キロに建設した軍事要塞が戦後放置されていたところ、1967年にベイツという人が勝手に占領し、独立を宣言したそうです。海上にぶっとい2本の柱を立てて、その上に平面と建物を載せただけの作りで、広さは200平米ちょっとといいますからテニスコートくらい。しかし軍事施設だけあって頑強に作られているらしく、築80年以上経てもいまだに波荒い北海に屹立しています。ベイツ氏は元英国軍人で、海賊放送をやってたかどで英国で訴えられてたときにこの要塞に気が付いて逃げ込んだとか。目のつけどころが良かった。沖合10キロは領海(当時は3海里)からはずれてて英国の司法権限の管轄外ということでまんまと逃げおおせたらしい。
いくら公海上とはいえ、英国軍が設置した施設にはもちろん所有権があったはずで、現代では絶対にムリで戦後の混乱期やったからできたということでしょう。
ベイツ氏は独立宣言ののち長く、爵位の販売や切手やコインの発行なんかでそれなりに外貨を得ていたとか。買う人もまあギャグみたいなノリやったんやと思います。
んで、このシーランド公国、誰も認めてないのに国と主張できるのかということです。国家とは何かということはモンテビデオ条約という約束ごとで定義されてて(1)国民(2)領土(3)政府(4)外交能力の4つが必要なんやそうです。これでいくとシーランド公国は、ぎり独立できてますが、別の「海洋法」という国際法で「領土」は陸地やないとあかんとされてます。人工の構築物は領土として認められないので、結果、国家とは認められません。ユニークなミニ国家が今後名実ともに独立国家となる可能性は無いのです。
まあ、そうでしょね。こんなの認めると、個人では難しくても大企業なら公海上に大きな人工島を造るなんてできなくもないでしょうし、次々と新しいミニ国家が独立して既存の国の干渉を受けずに好き勝手やりだしたら国際秩序が乱れてしまいます。
ショートショートの神様、星新一に「マイ国家」という作品があります。あるセールスマン(今や死語か)がとある家を訪れたとき、そこの主人が「マイホームやマイカーがあるんやからマイ国家があってもいい。うちにはわたしという国民とわが家という領土を備えててわたしが統治しているんやから、国家を宣言できる。おまえは領土侵犯を犯したんで逮捕する」とか、なんかそんな話でした。このようにひとりで騒ぐうちはあまり実害がありませんが、巨大な悪の一味、例えばガッチャマンのギャラクター、仮面ライダーのショッカー、ゴレンジャーの黒十字軍、タイムボカンシリーズのドロンボー一味などなど、世界中に国家権力の制約を受けない悪の軍団が誕生するかもしれません。やっぱり、国なんて簡単に創ったりはできんくしとくのがいいようです。
本命不在です。
江戸時代、はずみで主人を殺して逃げた侍が、逃げた先々でもやけになって悪事を重ねたのちに改心して出家の旅に出ます。九州豊前の国の海岸崖沿いにある通行の難所に至り、自分の罪滅ぼしとしてここに安全に通れる道を通そうと堅い岩山に金づちとのみで一人トンネルを掘り始めます。当初土地の住民からはバカにされますが、その後理解を得て手伝ってもらうものの、すぐにまた一人になってという作業を延々続けるうちに20年以上が経過します。一方、殺された主君の子もまた仇を求めて全国を経巡るうちとうとうこのトンネル堀りの現場で仇敵を発見します。すぐに殺そうとしますが、完成するまで待ってやれという沿線住民の要請もありいったん延期して、早く開通させるため自分も一緒に穴掘りを手伝う羽目になります。ようやく貫通したとき坊さんに「約束やし、さあ斬れ」と言われても、「敵を討つなどという心よりも、このかよわい人間の双の腕かいなによって成し遂げられた偉業に対する驚異と感激の心とで、胸がいっぱい」になって、とても復讐など実行できませんでした、というお話です。
この話のもとになったトンネルは「青の洞門」といって大分県中津市に実在し、指定文化財、観光名所になってます。実際は偉い坊さんが托鉢で資金を集めて作ったといいますから、小説は菊池寛の創作とは言え史実にインスピレーションを得たのでしょう。ちなみに開通後は通行料を取ってたので、日本最古の有料道路とも言われてるそうです。
これまで読んだり観たりした復讐劇のうち、このパターンに当てはまらないものがひとつだけありました。それがかの松本清張の小説「霧の旗」です。有名な作品で、繰り返し映画・ドラマ化されてるんで「ああ」と思われる方も多いでしょう。ネタバレで続けます。