北斎展で衝撃の発見

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 北斎の浮世絵展は過去に何回か行ったことがあります。久しぶりに大阪で特別展があり、さる筋から招待券をいただいたので、混雑をさけてG.W.突入前に出かけてきました。今回は北斎の「富嶽三十六景」と歌川広重の「東海道五拾三次之内」豪華二本立ての企画です。20240503_110646378_iOS.jpg

 会場は中之島の中之島香雪美術館。いそいそと訪れてみると平日の朝にもかかわらず入場券売り場は既にして長蛇の列。しかし、チケットを持ってたので待つことなく入れました。

 浮世絵は江戸中期以降発達した、当時の日常生活を描いた木版画や絵画です。まさに「浮世」の様を描いたものです。木版画の浮世絵は現代の雑誌のグラビアのごとく大量に刷られて、わずかなお金で買った人がしばし眺めて楽しんだ後はすぐに捨てられるか、かまどの焚き付けとなるか、襖の下張りに再利用されるなどで、そのほとんどが失われていきました。アートとしての扱いなんて受けていなかったわけです。それがですよ、奇跡的に後の世に残ったものがとんでもないことになってるのです。

 当時は誰もが作品の芸術性にそれほど気がつかなかったのに、今や、特に海外においていわゆる「ジャポニズム」の象徴として、人類の美術史上に燦然と輝く芸術作品として評価されています。

 昨年、アメリカで行われたオークションで、富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏(The Great Wave)」が276万ドル、円価にしておよそ4億円で落札されたそうです。また、先々月ニューヨークでのオークションでは、なんと富嶽三十六景の全46枚揃いが出品され、355万9千ドル、およそ5億4千万円の値がついたとか。

 富嶽三十六景は当初36種の予定で出版したところ、人気が出てよく売れたんでさらに10種追加で売り出したとか。「好評につき続編出来」は、いつの世も同んなじです。当時ハナかんで捨ててたチラシ紙が、400年の時を経てン億円以上の価値を得ているのです。おったまげー。そんな作品の数々を今回鑑賞にしに行きます。

 さて、場内は比較的空いてます。北斎は90年の長い生涯において浮世絵ばっか描いてたわけではなくて、草双紙の挿絵なんかもたくさんあります。入口からはそれらの展示がまず続きます。そしていよいよメインの富嶽三十六景の展示に至り、有名な作品を重点的にぢっくりと鑑賞しました。20240425_013140345_iOS.jpg

 どの作品にも言えることですが、鮮やかな多色刷りの印刷はほんのわずかでもズレてしまうと一巻の終わりです。それをまったく違えずに刷り上げるのはまさに超絶技巧と言えます。写真なき時代の最先端技術、すごい。

 さあ、神奈川沖浪裏...誰もが知る超有名作品、近世日本美術の最高傑作のひとつです。緊張の一瞬。過去何度も本物をみてるけど、あらためてやはりすごい。ダイナミックな構図の妙は言うまでもなく、線の鋭さ綺麗さ、細かな部分に至る繊細な配色など、実に完成されてるなと思いました。複製や写真では感じ取れない質感に、作品が紡いできた時間の重みを感じます。今目の当たりにしているこの小さな吹けば飛ぶような一枚の版画が数億円ですわ。ちなみにもうすぐ発行される新千円札の裏面にも使われてます。

 この展覧会、良かったのは「スマホなら撮影自由」やったこと。あちこちでパシャパシャ音がしてます。わたしも好きな作品を中心に撮らせてもらいました。

 残念やったのが、やっぱり入れ替え制ですな。特別展にありがちな例の、前期・後期で出展する作品を入れ替えるやり方です。いっぺんに全部出せよって話です。スペースの関係で...ってウソばっかし。工夫すればいくらでも展示できるやんか。これは、目玉の作品を出し惜しみして「全部見たかったらもう一回来てね」という策略に他なりません。神奈川...と並び称される代表作「凱風快晴」(別名「赤富士」)は、よく似た構図の「山下白雨」と並べて展示すれば、迫力満点で感動もいっそう高まるのに、今回前後期に分けて展示されます。確か以前にどこかで見た展覧会でも同じでした。これはなんとも残念。AKAFUJIKUROFUJI.jpg

 展示の後半は歌川広重です。私が子供の頃は安藤広重と言ってたように記憶してますが、いつの頃からか歌川姓が一般的になりました。こちらはなんといっても「東海道五拾三次之内」がメインです。切手にもなった有名な作品がズラッと並んでます。北斎の富嶽...と双璧を成す、珠玉の作品群です。NIHONBASHI HAKONE.jpg

 ゆっくりと歩きつつ鑑賞を進めるうちに「由井薩埵嶺」という作品を見ててふと気がつきました。

由井薩埵嶺2.jpg由井薩埵嶺2.png この風景は現代でも富士山のビューポイントとして有名なところなのですが、なんと、描かれてる旅人が富士の絶景を写メに残すべくスマホを構えてるではありませんか。なんということでありましょう、江戸時代半ばにすでにしてスマホが存在していたのです。この衝撃の事実が判明したことが、今回の美術展で得た最大の収穫でした。

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katsuhiko

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奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

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