気球 揚がる

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 わたしが小学生の頃切手ブームの最中に発行されたもので、日本画家中村岳陵の「気球揚る」という作品です。気球ではなく女の人の絵なんで、タイトルと違うやんと思った記憶があります。実は切手にする際にトリミングされてて、原画では左上部にふわふわ飛ぶ気球が描かれてるのです。

 kikyu.jpg気球といえば、多数の熱気球が一斉に飛ぶイベントなど、実に迫力があります。

 似たのんに飛行船があります。こちらは、戦前のヒンデンブルク号の爆発事故で安全性に疑問が呈され、人や物の運搬手段としてはもはやありえませんが、現代でも商用にはたまに利用されてます。ただ飛んでるだけで地上から注目を集め、クジラを連想させるその形でプカプカと上空に浮いてたらずっと見ていたくなります。屋外に居た人は必ず目にするわけやから、宣伝媒体としては優れものと言えます。バブルの頃はいろんな企業が作って飛ばしてましたが、最近、あまり見なくなりました。やっぱりとてつもなくお金がかかるんでしょね。なんにせよ、気球も飛行船ものんびり優雅に大空を行く穏やかな印象があります。

 そんな平和利用ではなく、きなくさい気球の話です。先週、中国が飛ばした軍事偵察用の気球がアメリカを横断したところ撃墜されたことが話題になりました。おもしろい。

 まず、今や各国がハイテクの偵察衛星であまねく地球上すべてを監視している時代に、プカプカと気球を飛ばしてたのが実におおらかでよろしい。さらに、アメリカともあろう国がミサイル基地などの軍事施設上空を不審物が飛んでるのに、大陸を遥か横断するまでなんら手を打たなかったことがおもしろい。聞けばこれまでにも何回かそれらしき気球は報告されてたとかで、その間に得られた情報が逐一中国に送られてたことになります。dry.jpg

 「あれぇ、見つかってないんかな。ほんじゃもっと飛ばしたろ♪」と調子にのって、結局バレたときの中国の狼狽がおもしろい。「民間の気象観測用のんが軌道をはずれて...」なんて子どもでもウソとわかる苦しい言い訳、そんなはずないやろって。民間といいながらその企業名も、どういう経緯、状況でとかの説明も全く無い。そこまでのウソを準備する時間も無かったんでしょう。バカの露呈を指摘された中国の広報官は「撃墜という軍事行動は行き過ぎで、強硬に抗議する」なんて逆ギレしてます。おもしろい。

 他国の領域を不法に侵犯したんやから撃墜されて当然です。このままプカプカ地球をくるっと回って中国まで帰るのを静観せよということでしょうか。そんな国はありえんやろと思ったら、ありました。わが日本です。これはいささかおもしろくない。

 3年前と2年前の2回、東北地方を横断した気球、当時は正体不明と騒がれましたが何のことはない、中国が飛ばした偵察気球やったのです。思えば当時わが国の政府も自衛隊も「正体が分からない」と言い放つだけでまったく手をうたず、気球が東方に消え去るのをただ見守るだけでした。

 sendai.jpg不審物としてただちに撃墜せよとはいわないまでも、政府は中国に対して「今、うちの上飛んでるやつ、おたくのんとちゃうの?」という確認をしたのでしょうか。その上で「知らん」と言われれば「ほいじゃ、撃ち落とすけど文句ないな」という外交上の対応をきちんと行ったのでしょうか。そんな報道はついぞ聞けませんでした。今回のアメリカの毅然とした態度との差に唖然とします。

 読売新聞によると「自衛隊法による破壊措置は落下により人命または財産に対する重大な被害が生じると認められる物体を対象としており、偵察用気球に適用することは想定していない」そうです。けど「不審飛行物体」ということは、持ち主も目的も分からないということでしょ。なのに、あの気球は北鮮が飛ばしたものではない、爆弾は搭載されていない、被害は生じないとなぜ言い切れたのでしょうか。不審飛行物体の領空侵犯をただ見過ごした結果「日本は正体不明の気球が飛んでてもスルーする」というメッセージを中国や北鮮に伝えたことになりました。かつて尖閣諸島で領海を侵犯した犯罪人を言われるまま中国にお返しした悪夢の民主党政権を、これでは批判できません。国防上の大失態というべきです。

 太平洋戦争当時、日本軍が和紙をぺたぺた貼り合わせて作った風船爆弾を大量に米国本土に向かって飛ばしてたのは有名な話です。実際にアメリカではこの爆弾によって6人の民間人が犠牲になったそうで、それなりの戦果はあったのです。9.11テロで甚大な犠牲が出るまでの間、歴史上唯一米国本土が爆撃を受けて犠牲者を出した事件でした。

 気球をバカにしてはいけないのです。

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