ピース大阪

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 日に日に涼しくなってはいるものの、ポッと蒸し暑い日がもどってきたりで、どうも体調の管理に気を使うこの頃です。

 先日、県人会の社会見学会で「大阪国際平和センター」の見学に行ってまいりました。通称「ピースおおさか」。

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 大阪大空襲をテーマにした展示で、「戦争の記憶を風化させることなく、次の世代に戦争の悲惨さと、平和の大切さを伝えていく」ことを目的とした施設やそうです。戦時下の生活雑貨、当時の実物や復元を展示してます。召集令状、千人針、爆弾の模型、防空壕の実物大復元まであります。

 メインの展示となる、大空襲の様子をジオラマとプロジェクションマッピングで見せる演出はなかなか迫力があり、空襲の怖さをうまく伝えてます。ほかにも戦時下の窮屈で悲惨な市民生活の姿や、関東大震災後東京市を凌ぎ日本最大の人口を擁し「大大阪」といわれた繁栄の時期から、空襲で焼け野原になるまでの悲惨な歴史の様子がじょうずに展示されてて、なかなか見ごたえがありました。

 広島の原爆資料館の大阪版といった施設です。展示の中には、太平洋戦争末期の大阪大空襲の少し前には大阪に「模擬原爆」なるものが落とされて大きな(その後の空襲に比べると小さな)被害がでたそうです。こんなこと知らなんだわ。終戦間近のアメリカは余裕しゃくしゃくやったんや。アメリカにサイパン・グアム取られたあたりでさっさと降参しとけば、沖縄戦も原爆もなかったのにと思うと、日本はどんだけマヌケやったんやと思わずにいられません。アメリカは太平洋戦争が始まるやただちに戦後処理20190904_062341540_iOS.jpgの計画に着手していたわけで、国力の圧倒的な差を度外視した開戦は、今思えば本当に「無謀」の一語に尽きます。歴史にタラレバは禁物ですが、なんともやり切れませんわ。

 この施設の目的は冒頭あったとおり「戦争の悲惨さ」を後世に伝えることです。戦争なんかやったらこんなひどい有様になるねんぞー、だからうかつに戦争なんか始めたらダメよ、というわけです。

 非常によくできてて興味深く見ることができたのですが、なぜかどうも、何とも言えない違和感がある。館内見てまわるうちにそれはどんどん募っていく。さて、これはいったい。

 展示の一角には、なぜ日本が悲惨な戦争に突き進んでいったかを小学生にもわかりやすく説明するビデオが上映されてます。3・15事件、2・26事件など、戦時下のいろんな重要なできごとを説明しますが、その評価、解説がありません。張作霖爆殺事件や盧溝橋事件などについても、侵略のための日本軍の謀略やったという説明はなく、ただこんな事件が起こりましたということだけを淡々と伝えます。「大恐慌からの不況で経済が苦しくなった日本は、大陸に活路を見出しました」まるでそれが当たり前の自然現象のように。

 つまり、そこに、侵略された大陸や朝鮮半島の被害者の視点がまったく反映されていないのです。それが違和感の正体でした。大陸に活路を見出したのはもっぱら日本の理屈で、見出された方はたまったもんではありません。侵略はやってはいけないことだったという視点、反省がここには展示されていません。「ここはそういう趣旨の施設ではない」と言われればそれまでですが、戦争の悲惨さを伝えるのが目的ならば、かつて日本の軍国主義が大陸のひとびとにどんな非人道的な行為を行ったかを合わせて伝えなければ片手落ちでは、という話です。20190904_055430995_iOS.jpg

 思うに、ピース大阪にせよ原爆資料館にせよ、同じ趣旨の記念館を建てるのはすべて被害者です。「こんなに被害を被った」ことを中心に訴える施設なのです。加害者は作りません。アメリカ国内で原爆被害者の写真展やろうとすると退役軍人会などから嫌がらせがあり実現しません。日本で南京虐殺展をやろうとするとおそらく右翼団体の妨害があるでしょう。どっちも、後ろ暗いところがあるからです。

 かといって、中国の南京虐殺記念館や韓国の独立記念館なんてのは、誇張した煽情的な展示で加害者に対する憎悪の念を極限まで引き出す、反日教育施設に過ぎません。こんなのはやりすぎです。

 ピース大阪ではさすがに、大阪大空襲という虐殺事件での米軍の蛮行を糾弾するなどという、不毛な趣旨は前面に出してはいません。あくまで平和を希求することが目的の展示だからです。このあたりは中国や朝鮮ではなくて良識ある日本の仕事やと思います。

 であるなら、単に被害者目線一辺倒ではなく、日本の軍国主義によって、大阪市民以上に悲惨な目にあったひとびとが世界中にいたことをもう少し展示に反映してほしいところです。

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katsuhiko

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