2017年3月アーカイブ

騎士団長殺し

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 村上春樹の最新作「騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編、第2部 遷ろうメタファー編」先月の発売からおよそ1カ月経ちました。初版130万部刷っても余裕で売りつくすとか。発売時点でミリオンセラー確定なんて、出版不況の救世主的存在にして、じつにバケモンみたいな作家さんです。わたしは新作発売を待ちわびるほどのファンではありませんが、氏の作品はたいてい読んでます。
 
IMG_7929.jpg 誰かが「出版界のボジョレー・ヌーボー」とか書いてましたが、現今、発売日の発売時間にカウントダウンで大騒ぎできるような作家は村上春樹だけです。芸能界やスポーツ界、いろんな分野がそうですけど、文壇にもそんな存在がいるってことは、わたしみたいなお祭り大好きミーハーにとってはやはり喜ぶべきことであります。
 
 先週の連休前に、書店で山のように積み上げられているのをふと見かけて、とりあえず買ってしまいました。超絶ミーハーを自認する身としては避けて通れないところなのです。で、先週の連休、とくに出かける予定もなかったので夜更かしして一気読みしました。今日はその感想を綴りますので、ややネタバレ注意です。
 
 まあ、なんというか実に村上春樹してます。穴の中からとか壁を抜けたりとかで、異世界に行っちゃって通り抜けて無事に帰ってくるストーリーが得意な村上春樹ですが、今回もやっぱりそれがあります。というかクライマックスでそんな展開となります。不思議な村上ワールドここに極まれりという感じです。
 
 見方によってはファンタジー小説と言えなくもない。だって、現実ではありえない超自然的な出来事について、種明かしや説明が最後まで無く回収されずに残ってしまうのです。前々作「1Q84」でもそうやったけど、極めて現実的なストーリーの進行からいきなりファンタジックな展開に突入します。「えっ、え?」ってなります。主人公「私」の前に「イデア」である騎士団長が登場する場面が、この上なく唐突なのです。シリアスな恋愛ドラマにいきなりゴジラが出現するようなもんです。
 
 推理小説やミステリーよろしく細かなディテールや伏線を見落とさないぞと思いつつ読んでるのに、ある時点から物理的整合性は意味を失い、独特の世界観が展開されていくのです。これぞ村上ワールドの真骨頂。
 
 主人公「私」は冒頭で妻から突然離婚を言い渡されてしまい、傷心の旅に出ます。その途上で起こった重要な伏線を経て、その後の実にいろんな出来事、展開の中で、結果的に自分は妻の中に幼き日に亡くした妹の姿を求めていたのだということに気がつき、めでたく妻とよりが戻ります。ハッピーエンド的な香りが漂いますが、実はその重要な展開すら、ひとつのエピソードにすぎません。この作品では村上が訴える「イデア」や「メタファー」というもっと重要な主題が重層的に展開されていくのです。
 
 面白かった。なんだかこれまでの村上作品をおさらいしているような感じがしました。かといって決して二番煎じ感はなく、むしろスケールアップしています。
 
 ネット上や新聞雑誌では「明らかに新境地を切り開いた」と書いているのがありますが、同感です。
 
 ちなみにこの書評、感想なんてのは、まあ実に多くの意見があるもんで、村上がいかに人気作家であるかということを如実に示しています。中には「駄作である」とけちょんけちょんに悪口書いてるのんもあります。センモンカさんたちは、文学的、芸術的な観点から作品に難癖つけてけなすことが仕事なんで仕方ないんでしょうけど、小説なんて、読んで面白ければそれでええやないですか。
 
 ところで、この作品続編があるんやないでしょか。お話の中にでてきて重要な役割を果たす「穴」が結局なんやったの、とか、戦前の大陸やヨーロッパの出来事についても、もちょっと詳しく書いてよって部分があったりで、なんとなくそんな気がするんです。「上・下巻」ではなく「第一部・第二部」なんてところからも、そんな兆しがありありと窺えます。第三部があるとしたら、実に、実に楽しみです。
 
 どうやら「新作発売を待ちわびるほどのファン」になってしまったようです。

ばうむ食う変

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 ホワイトデーとかいう、1カ月前のバレンタインデーにチョコレートいただいた返礼に、お菓子などをたくさん買い込んで配って歩く日が先日ありました。
 
 バレンタインの方は、わたしがものごころついた頃にはもうこの世のものとなっていましたが、ホワイトデーなる習慣は、中学高校時代にはまだなかったように思います。単に縁がなかっただけかも知れませんが。IMG_7925.jpg
 
 チョコもらった男子はひと月後にお返しをすべし。それも価額にして、もらったものの何倍かの品を選定すること、なんていったい誰が決めたんでしょか。多分、お菓子の製造メーカー団体と商店街振興組合と百貨店の業界団体が結託して世に広めていったのでしょう。おかげで平成の現代、世の男性諸氏はこの時期大いに気をつかうこととなってしまいました。
 
 わたしはというと、今年は奥さんと相談して、ねんりん屋のマウントバームを大量購入しました。
 
 バームクーヘンは、カステラと並ぶ伝統的な人気洋菓子です。ピンからキリまであって、幼い頃に駄菓子屋で売ってたそれは、包装のセロハンをはがすと年輪が消えてしまうのもありました。
 
 わたしもわりと好きでたまに食べますが、ねんりん屋さんのんは確かに美味しい。他のお店のとははっきりとレベルが違います。人気あるのも頷けます。
 
 IMG_7926.jpgすこし前までは東京にしかお店がなく、通販もやってないんでなかなか手に入らなかった。東京出張のたびに東京駅の大丸で並んで買って帰ってたもんです。それが、なんと去年の秋にとうとう関西上陸。梅田阪急の地下で買えるようになりました。で、今年のチョコのお返しはこれしかないやろということになった次第です。
 
 バームクーヘンに関して、ひとつ思い出があります。もう何年も前になりますが、東京在住の妹を訪ねたときに「これ美味しいからひとつ持って帰って」と大きな箱を持たされました。これから大阪まで帰るのに荷物増えるのはいややと固辞しても「めったに手に入らないのを苦労して分けてもらったのよ!文句言わずに持って帰りなさい」と譲らない。妹の旦那に助けを求めても「言い出したら聞かないからあきらめましょう」と味方になってくれない。仕方ないので、キャリーバックの上に乗せてぶつけないように苦労して持って帰ったところ、うちの奥さん、
 
「マダムシンコ?こんなもんどこでも売ってるやん。わざわざ東京から持って帰ってきたの?何やってんのよ。ケラケラ」
 
 そう、マダムシンコは大阪発祥で当時東京には店が無く(今でもそやろか?)なかなか手に入らなかったらしいのです。そして、私も当時、シンコのバームをまったく知らず、妹が言うとおり貴重なものと思い込んでしまったというわけでした。
 
 ついでに言うなら、わたしは、カラメルでコーティングされたシンコの激甘ブリュレバームより、シンプルでずっしり感のある生地自体でしっかり勝負しているねんりん屋のんがやっぱり好きです。

鎮魂の日に

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 今日もいいお天気です。
 
 日曜日はどこかに出かけようかと思いつつパソコンで書き物してたのは2日前のこと、突然その瞬間はやってきました。
 
 何年かに一度必ず訪れる、PCのクラッシュです。突然エラーを告げるメッセージが現れ、強制的に再起動が始まるのは、ままあること。「ああ、またか」としばらく待ってると勝手に再起動して何事もなかったかのように機嫌よく動きだすのがいつものことなのですが、この時は違いました。再起動しても正常にWindowsが始まらず、「復元をしようとしてます」という意味のメッセージが表示され、しばらくすると結局「ダメでした。あきらめてね」という意味のメッセージに変わり、電源切るしかありません。
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 以前からどうも調子悪く、ハグったり落ちたりが増えてきて、「そろそろかな」と思いつつ頻繁にバックアップをとりつつだましだまし使ってたので、さして慌てませんでした。悟ってます。3・11鎮魂の日に何らかのチカラが働いたのか、何年かに一度のクリーンインストール行うこととなりました。
 
 従って今日、日曜日はその作業のためお出かけはできなくなりました。いいお天気やのに残念。今、ブログの更新はmacbookでやっております。
 
 さて、森友問題。小学校の開設は不認可となりそうなんで、理事長は申請を取り下げることとなりました。それはそれで、やっぱりなぁというところですけど、よく考えてみると、今回の大騒ぎは、国有地の超お買い得払下げ問題が露見したことからこの学校法人と理事長の胡散臭さが一気に拡散し、設置認可申請に虚偽事項がわらわらと出てきて、結局なんだかんだでとても認可できないとなったわけです。
 
 もし、きっかけとなった払下げ疑惑が発覚してなければ、さほど問題になることもなく認可されてた可能性が高かったのです。まあ、結果オーライでひとまず、よかった。
 
 今回不認可となったのは、申請書にウソばっか書いてるやんかという、あくまで不適切な申請内容を理由とするものであって、極めて排他的、国粋主義的色彩が強いこの学校の教育方針そのものが不適正と判断されたわけではなく、また政治家にわいろ使って、便宜を図ってもらおうとしたやり方がまずいと判断されたからでもありません。
 
 そもそも私学教育は、どんな学校でも「こういう教育を行いたい」という設置者の思い、つまり「建学の精神」を実現するために設立するものです。その理念は設置者の考えに基づいてそれぞれであって、たとえそれがキリスト教や仏教の教えに基づくものであっても、またイスラム教であっても、極端なはなしカルト教団の教義をいただいたものであったとしても、申請に必要な要件さえ備えていれば国や都道府県の審議会は認可の答申を出さなければなりません。
 
 今回の森友学園であっても、日本人の誇りを前面に打ち出した教育をやりたい、という理念に基づいて学校の設置を模索したという、その点においてはなんら責められるいわれはないわけです。しかしやり方が杜撰で姑息で下手くそやった。
 
 戦後の民主主義日本では明確に否定されている教育勅語を児童に暗唱させるなんてことはあってはならないし、その教育方針が受け入れられる余地は甚だ少ないと思います。仮に、ことが露見せずこの学校が首尾よく開設されてたとしても、多くの児童を獲得できるかというとはなはだ疑問ではあります。
 
 しかし、そのことと、理念に基づいて自分の目指す教育を行う自由を規制することはあくまで別問題やということです。

ブーメラン炸裂

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 ちょっと前までは文部科学省を中心とした天下りの話で大騒ぎしてたのに、今や新聞、テレビは森友学園一色ですね。いろんな問題が順番を待って起こるわけではなくて、同時多発並行で進行しているんでしょうけど、一度にあれもこれも話題にできないんで、世間の関心はひとつにしぼられていきます。流行みたいなもんです。ベクトルを合わせて攻撃したほうが効果があるし、その方が外野でお祭りとして見てる方も楽しいというもんです。
 
 で、森友。「瑞穂の國記念小學院」という「日本で初めてで唯一の神道の小学校」を開設しようとしています。ホームページでは「キリスト教や仏教の学校は日本には沢山ありますが、神道の小学校はありません」と謳ってますが、確かにそのとおりです。また「神道は宗教ではありません」とも言ってて、その点についても、わたし自身もかつて同んなじようなこと書いたことあり、なるほどと感じるところもあります。
 
 しかし、それを言うなら神道には教義そのものもないのであって、他の宗教のように教義に沿った教育を行うことがそもそもできるのかって話になります。わが国の深淵な伝統である神道と、忌むべき戦前の軍国主義をごちゃ混ぜにしている点でこの学校は明らかに間違ってます。もし私に子どもがいたとしても、絶対にこんな学校には通わせたくない。
 
 このケッタイな学校の設置に際して、政治家、特に安倍首相が何らかの便宜を図ったんやないんですか、という追及を野党が今国会でしきりに行ってるわけです。
 
 その質疑の中で出てきたのが「この学校は、教育の政治的中立という点で問題がある」という議論です。議員の便宜行為という法律違反の問題から逸れてしもて、学校そのものの適正性に論究したわけですが、これがなかなかにおもしろい。
 
Boomerang.jpg なるほど、学園がすでに設置している系列の幼稚園で園児たちに「アベソーリがんばれ」だの「アンポ法とおってよかったです」なんて唱和させることは多聞に政治性を帯びてます。教育の場で特定の政治勢力に肩入れしているわけで、こんなことやっちゃダメです。
 
 しかし、それを言うなら政権時代の民主党なんて日教組の御用政党やったわけで、日教組といえば教育の場に政治を持ち込んだというより、労働組合活動より政治活動を主軸としてたそれこそ胡散臭い団体の代表格です。つまり教育と政治の連携・融合は民主党の得意とするところやったわけです。その旧民主党の残党である民進党議員が「この小学校は政治性が…」なんて叫べば叫ぶほど、またぞろお得意のブーメランが自分の側頭部を直撃することになります。
 
 民進党、何らの建設的な主張なく相手を貶めることに腐心する情けない国会運営はいつものこととしても、今回は戦法をもう少ししっかりと考えたほうがいい。本来追及すべき政治家の口利きとか、認可に際してのお目こぼしとか、切り口を変えていかないと、安倍さんこの問題はまんまと逃げ切れますよ。
 
 で、気がついたら国会の会期はいつのまにか終わってしもて、テロ対策法や特定秘密保護法なんかの重要な議論はできないまま、いわゆる強行裁決で見事成立と。安倍さんが自分でオトリになった格好で、結果的に自民党の思惑どおりに進むことになります。
 
 与党と対峙するため本当にやるべきことは何なのかが分かっていない。しかも蓮舫党首の頭部には例の二重国籍問題をはじめとする何本ものブーメランが突き刺さったままで、それを抜こうとする動きも見られません。もうね、ほんと民進党ってどうしょうもない。

WELCOME

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PROFILE

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katsuhiko

男 

血はO型

奈良県出身大阪府在住のサラリーマン

生まれてから約半世紀たちました。

お休みの日は、野山を歩くことがあります。

雨の日と夜中はクラシック音楽聴いてます。

カラオケはアニソンから軍歌まで1000曲以上歌えます

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