先週、学生時代の友人たちに会うため上京しました。
まったく仕事抜きで上京するのは実に久しぶりです。某高層ビルの会員制レストランでしばし旧交をあたためたのち定宿で一泊すると、翌日はもうなんの予定もなく帰るだけです。いつもなら神田の古書店街をふらふらするところですが、ふと思い立って向かったのが「郵政博物館」。
たびたび書いてますように私は切手少年だったことから、東京にいた学生時代には大手町にあった逓信総合博物館には何回か足を運びました。世界中の切手と郵便に関することどもが一堂に集められており、地味ではありますが実に興味深いスポットでした。
その後郵政民営化によりこの博物館も公共の施設ではなくなったからでしょうか。はたまた老朽化によるものかも知れませんがどうやら閉館したらしい。その後継版としてオープンしたのが郵政博物館です。で、今回初めて行ってみることにしたわけです。調べてみると、かの東京スカイツリーの足元にあるらしい。
電車乗り継いで着いたのが10時少し前。ソラマチにはプラネタリウムもあり、わりと空いてたので先にこちらに入ってみることにしました。かつて大阪電気科学館には日本最初のプラネタリウムがあり、小学生の頃遠足で出かけたのを覚えています。
星や星座の説明は昭和の昔からあまり変わるものではありませんが、映像技術の進歩で臨場感が飛躍的に進んでおり、純粋に星空をレクチャーするのではなくショー的な要素が強まってます。受付で聞いた説明では約40分の上映ということでしたが、映画館とおんなじで開始前にまずいろいろなCMを強制的に見せられる。これが6・7分も続くので実際の上映は30分とちょっとか。お金を取っておきながらこれはないやろ。しかし、まあそれなりに楽しめました。
外に出ると、スカイツリーのチケット売り場に向かう長い列ができつつあります。私はツリーには昇らないんで、列を横目に目当ての郵政博物館に向かいました。かつての逓博は大きなビル丸ごとやったのに、新装なった郵政博物館はなんとスカイツリータウン・ソラマチという商業施設のワンフロアに納まっています。逓博にはかつての電電公社(今のNTT)やNHK関連の展示もあったので、郵便関連だけになったことでいちじるしくスケールが縮小されてます。
それでも30万種類以上の切手を中心にした常設展示や企画、イベントなんかもやっててそれなりに楽しめました。
かつて切手蒐集といえば趣味の大道で、子供の頃には大ブームがありました。しかし民営化と相前後して発行される記念切手の種類も枚数もやたらと増えてきて、テーマを絞らないとコンプリートはかなり困難になっています。そもそも切手はいまやいち企業の行うサービスに対する支払手続用証紙に過ぎないわけで、その収集に果たして意味があるのかという疑問もあります。
記念切手は、郵政にしてみれば発行したらしただけすぐに買ってもらえて、郵便料金として使われることがないので対価に見合うサービスを提供する必要がない。いわゆる丸儲けです。プレミアがつくような逸品は別として、ありふれた記念切手はコレクションとして収集家の手元で眠り続けてその価値を大幅に下げ続けています。発行当時10円切手1枚で封書を送れたのに、今では9枚貼らないと送れない。つまり物価換算で10分の1近く価値が下がり、その消えた価値は郵政の丸儲けとして国に吸い上げられてきたのです。
今や郵便は官制からいち企業へと落ちぶれ、博物館の場所も東京の官庁街ど真ん中の大手町から新名所とはいえ辺境の墨田区に追いやられ、小さなスペースでひっそりとかつての栄華を偲んでいるというわけです。純真な切手少年のわずかなお小遣いを吸い上げて国庫を満たしてきた鬼畜の所業の報いといえるでしょう。
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